会社が労災申請をしてくれないとき|本人が自分で請求する方法と事業主証明がもらえない場合
結論からいうと、会社が労災保険の申請や請求をしてくれない場合でも、被災した労働者本人が自分で請求できます。療養(補償)等給付や休業(補償)等給付の請求書は、本人が所轄の労働基準監督署長に提出する流れです。会社が事業主証明を拒否している場合や、会社自体が廃止されている場合でも請求は可能です。厚生労働省の請求手続リーフレットに基づいて、手順・様式・相談先を解説します。
会社の届出・証明と、本人の保険給付の請求は別
まず整理しておきたいのは、労災事故のときの会社の役割と、被災した労働者の役割は別だということです。会社(事業主)には、労働者が死亡した場合や休業した場合などの労働者死傷病報告を労働基準監督署長へ行う義務があります(労働安全衛生法第100条など)。また、給付の請求書には事業主の証明欄があり、会社は災害の状況などについて証明する形で協力します。
一方、療養(補償)等給付や休業(補償)等給付などの労災保険給付は、被災した労働者本人が請求して受け取るものです。厚生労働省のリーフレットの流れ図でも、被災労働者が請求書を提出し、労働基準監督署長が決定し、本人に支払われる形になっています。つまり、会社が「申請してあげる」のを待たなくても、本人から請求を始められます。
対象となる災害と給付の種類
労災保険で給付の対象となる主なケース
- 業務災害:業務上の事由による負傷・疾病
- 通勤災害:通勤による負傷・疾病
- 療養(補償)等給付:治療費などの給付。労災指定医療機関等で無料で受ける「療養の給付」と、指定医療機関等以外で受診して費用を立て替えた場合の「療養の費用の支給」があります
- 休業(補償)等給付:療養のため働けず、賃金を受けていない日に対する給付
- 障害(補償)等給付・遺族(補償)等給付など:症状が固定した後や死亡した場合の給付
業務上のケガか通勤中のケガかで使う請求書(様式)が異なります。この記事では、負傷・疾病の直後から必要になる療養(補償)等給付と休業(補償)等給付の請求を中心に説明します。
会社が申請してくれないときの本人請求の流れ
所轄の労働基準監督署を確認する
請求先は、災害が発生した事業場を管轄する労働基準監督署長です。管轄が分からない場合は、厚生労働省の「労働局・労働基準監督署連絡先」ページや労災保険相談ダイヤルで確認できます。
請求する給付と請求書(様式)を確認する
いま受けている治療が目的なら療養の給付、治療費を自分で支払ったなら療養の費用の支給、休業して賃金を受けていないなら休業(補償)等給付です。請求書は厚生労働省の「主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)」からダウンロードできます。
事業主に証明欄の記入を依頼する
請求書には事業主の証明欄があります。まずは勤務先の事業主に記入を依頼します。支店長などが事業主の代理人として選任されている場合は、その方の証明でも構いません。会社が応じない場合は、次の項目の対応を確認してください。
請求書を提出する
療養の給付は、受診している労災指定医療機関等を経由して所轄の労働基準監督署長へ提出します。療養の費用の支給や休業(補償)等給付は、所轄の労働基準監督署長へ直接提出します。窓口または郵送で提出できます。個人番号の記載がある書類のため、窓口では本人確認書類の原本を、郵送では本人確認書類の写しを同封します(郵送は普通郵便でも受理されますが、追跡できる簡易書留が推奨されています)。
審査・決定を待ち、給付を受ける
労働基準監督署が審査して支給・不支給を決定します。休業が長引く場合は、休業(補償)等給付を1か月ごとに請求するのが一般的です(厚生労働省リーフレット)。
事業主の証明がもらえない場合はどうするか
厚生労働省の請求手続リーフレットには、次のように明記されています。「働いていた会社が廃止されている場合や、会社が事業主証明を拒否するなど、事業主証明が得られない場合であっても労災請求はできますので、最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署にご相談ください。」
つまり、証明欄が空欄のままで困ったときは、請求をあきらめるのではなく、最寄りの都道府県労働局または所轄の労働基準監督署へ相談し、指示を受けながら請求書を提出します。会社との関係を気にして1人で抱え込むより、労基署へ事実を伝えることが先決です。
主な請求書(様式)と提出方法
| 受けたい給付 | 業務災害の請求書 | 通勤災害の請求書 | 提出方法 |
|---|---|---|---|
| 療養の給付(労災指定医療機関等で無料で治療を受ける) | 療養補償給付たる療養の給付請求書(様式第5号) | 療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3) | 受診中の指定医療機関等を経由して所轄の労働基準監督署長へ |
| 療養の費用の支給(治療費を立て替えた場合) | 療養補償給付たる療養の費用請求書(様式第7号(1)など) | 療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5(1)など) | 領収書等を添えて所轄の労働基準監督署長へ |
| 休業(補償)等給付(休業4日目以降) | 休業補償給付・複数事業労働者休業給付支給請求書(様式第8号) | 休業給付支給請求書(様式第16号の6) | 所轄の労働基準監督署長へ(休業特別支給金の申請は原則として同時) |
休業(補償)等給付の要件と支給額
休業(補償)等給付の3つの要件
- 業務上の事由または通勤による負傷・疾病の療養のため
- 労働することができない
- 賃金を受けていない
3つの要件を満たす場合、休業の初日から3日目まで(待期期間)を除き、4日目から休業(補償)等給付と休業特別支給金が支給されます。支給額は、単一事業労働者の場合、休業(補償)等給付が給付基礎日額の60%×休業日数、休業特別支給金が給付基礎日額の20%×休業日数です。給付基礎日額は、原則として労働基準法の平均賃金に相当する額です。
休業初日から3日目までの待期期間は、労災保険からは支給されません。業務災害の場合、この間は事業主が労働基準法に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うことになります。会社がその対応をしない場合も、給付の請求とあわせて所轄の労働基準監督署へ相談してください。
時効に注意:2年を過ぎると請求できなくなる給付がある
給付ごとの時効
- 療養の費用の支給:費用の支出が確定した日の翌日から2年を経過すると、時効により請求権が消滅します
- 休業(補償)等給付:賃金を受けなかった日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年を経過すると消滅します
- 療養の給付(現物給付):時効の問題はありません
請求書を提出すれば時効の進行は止まります。会社の対応待ちで時間が過ぎないよう、本人請求を早めに始めることが大切です。
相談先:証明がもらえない場合や書き方が分からない場合
相談窓口
- 労災保険相談ダイヤル:0570-006031。請求書の書き方、支給要件、給付内容など一般的な制度の問い合わせ先です。厚生労働省のリーフレットでは、月曜〜金曜の8時30分〜17時15分(祝祭日・年末年始を除く)に案内があります
- 所轄の労働基準監督署:請求書の提出先であり、個別の状況に応じた相談先です
- 都道府県労働局:事業主証明が得られない場合などに、厚生労働省のリーフレットが相談先として案内している機関です
よくある質問
会社に無断で本人だけで請求してもよいですか?
労災保険給付の請求書は、被災した労働者本人が所轄の労働基準監督署長へ提出する流れになっており、会社を経由しなくても請求できます。会社の主な役割は、請求書の事業主証明欄への記載などです。事業主証明が得られない場合は、最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署へ相談して進めます。
事業主証明欄が空欄のまま請求書を提出してもよいですか?
事業主に証明を依頼しても拒否された場合や、会社が廃止されている場合でも労災請求はできます。ただし、証明欄を空欄にしたまま自己判断で提出するより、最寄りの都道府県労働局または労働基準監督署へ相談して指示を受けてください。厚生労働省のリーフレットも同様に相談を案内しています。
退職したあとでも労災保険給付を請求できますか?
請求できます。離職後の2回目以降の請求では、原則として事業主の証明は不要です。ただし、請求にかかる療養のため働けなかった期間の全部または一部が離職前に及ぶ場合は証明が必要です。療養の費用の支給は支出確定日の翌日から2年、休業(補償)等給付は賃金を受けなかった日ごとの翌日から2年の時効があるため、早めに手続きしてください。
まとめと次の行動
本人請求を進めるチェックリスト
労災保険給付は被災した労働者本人のための制度です。会社の対応が遅い・証明してくれないといった状況でも、まずは労災保険相談ダイヤルや所轄の労働基準監督署へ相談し、本人請求を進めてください。当サイトの内容は参考情報です。手続きの詳細は、管轄の労働基準監督署や厚生労働省の最新案内をご確認ください。
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