厚生年金の70歳到達届は70歳到達日(誕生日の前日)から5日以内の提出が原則ですが、過ぎても遡って受理されます。ただし平成31年4月改正で、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が前日と同額の場合は提出自体が不要になりました。気づいたら速やかに事務センターまたは管轄の年金事務所へ電子申請・郵送・窓口で提出し、後日届く確認通知書で記録が正しく処理されたかを確認します。
手続きの概要
在職中の厚生年金被保険者が70歳に到達し、到達日以降も同一事業所に引き続き使用される場合、事業主は「厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」(以下、70歳到達届)の提出を検討します。この届出により、従業員は70歳到達日の前日で厚生年金保険の被保険者資格を喪失し、同時に70歳以上被用者に該当します。健康保険は70歳到達で喪失しないため引き続き加入となります。厚生年金保険料は70歳以上被用者期間は徴収されず、年金額にも反映されません。
誰が・いつ・どこへ提出するのか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出義務者 | 事業主(被保険者本人ではありません) |
| 提出期限 | 70歳到達日(誕生日の前日)から5日以内。過ぎても遡って受理されます |
| 提出先 | 事務センターまたは管轄の年金事務所 |
| 提出方法 | 電子申請、郵送、窓口持参のいずれか |
| 届書様式 | 厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届(日本年金機構ホームページでダウンロード可) |
用紙は対象者が70歳に到達する月の前月に、日本年金機構から事業所へ事前送付されます。紛失した場合はホームページからダウンロードするか、年金事務所へ連絡して再入手します。
出し忘れても罰則はあるのか 遅れたときの扱い
5日以内に提出できなくても、遅延を理由に届出が拒否されることはありません。速やかに提出すれば、70歳到達日に遡って資格喪失と70歳以上被用者該当の処理が行われます。厚生年金保険法上の届出義務違反に罰金等の直接の罰則が科されるケースは一般的ではありませんが、記録の訂正が遅れると次のような実務上の不利益が生じます。
遅れた場合に起こりうること
- 70歳以上被用者としての標準報酬月額相当額の決定が遅れ、在職老齢年金の調整や年金記録にずれが生じる
- 日本年金機構で自動処理された資格情報と実際の報酬が異なったままになる
- 後日、機構から送付される「資格喪失確認通知書」や「70歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ」の内容が実態と異なる
遅れに気づいたら、遅延理由をあれこれ悩むより、正確な該当年月日と報酬月額で速やかに提出することが最も重要です。
2019年4月改正で提出が不要になる条件
平成31年4月から取扱いが変更され、次の要件に当てはまる方は事業主からの70歳到達届の提出が不要になりました。日本年金機構が資格喪失と該当処理を自動で行います。
| 判定 | 条件 | 事業主の対応 |
|---|---|---|
| 提出不要 | 70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、70歳到達日の前日における標準報酬月額と同額 | 提出不要。機構の自動処理を待つ。後日届く通知書の内容を確認する |
| 提出必要 | 70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が、前日の標準報酬月額と異なる | 70歳到達日から5日以内に70歳到達届を提出する |
標準報酬月額相当額は、70歳到達日に70歳以上被用者に支払われる報酬月額(通貨と現物の合計)を、被保険者の標準報酬月額と同じ方法で当てはめて算出します。月給制なら、70歳到達日時点の報酬を期間の総日数で割り30倍した額を報酬月額として等級に当てはめます。判断に迷うときは、事前に賃金台帳で確認しておきます。
遅れたときの手順
70歳到達届の要否を確認する
対象者の誕生日から70歳到達日(誕生日前日)を確定し、70歳到達日時点の報酬月額から標準報酬月額相当額を算出します。前日の標準報酬月額と同額か異なるかを比較し、同額なら提出不要、異なるなら提出が必要と判断します。
届書と記入内容を用意する
日本年金機構ホームページの「厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」の様式(PDFまたはExcel)と記入例を入手します。資格取得(該当)年月日、個人番号(マイナンバー)、報酬月額の通貨・現物・合計、事業所整理記号等を記入します。短時間労働者や60歳以上の継続再雇用ではないかも併せて確認します。
記入時のよくある不備
- 資格取得(該当)年月日の記入漏れ:70歳以上被用者に該当した日(70歳到達日)を必ず記入する
- 個人番号の記入漏れ:原則マイナンバーを記入し、記入できない場合のみ基礎年金番号+住所を記入する
- 報酬月額の合計欄の記入漏れ:現物がない場合も「0」と合計額を記入する
事務センターまたは年金事務所へ速やかに提出する
電子申請、郵送、窓口持参のいずれかで提出します。5日を過ぎていることは正直に記載し、遅延理由を過度に飾る必要はありません。控えが必要なら、郵送時は返信用封筒を同封し、電子申請は受付通知を保存します。
確認通知書で処理結果を確かめる
提出後または自動処理後に、事業主宛てに「資格喪失確認通知書」と「70歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ」が届きます。標準報酬月額相当額や資格喪失年月日に誤りがあれば、速やかに訂正の70歳到達届を提出します。退職や別事業所への転籍がある場合は、別途「資格喪失届・70歳以上被用者不該当届」や「70歳以上被用者該当届(新規雇用時)」が必要です。
放置した場合の実務リスク
届出を放置しても直ちに罰則があるわけではありませんが、年金記録と実態の不一致が残ると、在職老齢年金の支給調整が正しく行われない、将来の年金相談で記録訂正に時間がかかる、労働保険や健康保険の手続きと整合が取れなくなるといった二次的な手間が生じます。70歳到達前後の標準報酬が変わっているのに届出がないと、機構側の自動決定額のままになるため、早めの是正が最も低コストです。
よくある質問
5日を過ぎたら罰金や過料はありますか
70歳到達届の提出遅延自体で直ちに罰金が科されることは一般的ではありません。ただし届出義務は法令上あり、速やかに提出して遡って処理することが求められます。放置すると標準報酬月額相当額の決定が遅れ、在職老齢年金の調整等に影響するため、気づいた時点で提出します。
同額なら本当に提出しなくてよいですか
はい。2019年4月から、70歳到達日時点の標準報酬月額相当額が前日と同額の場合は、日本年金機構が自動で資格喪失と該当処理を行うため事業主の届出は不要です。ただし機構から届く通知書の金額が実態と異なるときは、訂正として届出が必要です。
健康保険の手続きも必要ですか
70歳到達による健康保険の資格喪失はありません。協会けんぽや健康保険組合の被保険者としての資格は継続します。健康保険の70歳到達に伴う高齢受給者証等の交付は、保険者が別途行います。厚生年金と健康保険を混同しないでください。
70歳以上で新たに雇い入れた場合の届出は同じですか
異なります。新たに70歳以上の方を雇用したときは「健康保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届」を5日以内に提出します。退職により70歳以上被用者でなくなる場合は「資格喪失届/70歳以上被用者不該当届」を提出します。
次の手続きへ
70歳到達届の提出後は、算定基礎届や月額変更届など他の社会保険手続きとの整合も確認します。特に7月の算定基礎届や、昇給時の月額変更届の対象に70歳以上被用者が含まれるかをチェックし、漏れなく届出を継続してください。