事業主が雇用保険被保険者離職証明書の訂正に応じないときは、労働者本人が管轄のハローワークへ離職票の補正を申し立てます。ハローワークが事業主と労働者双方の主張と資料を確認し、職権で離職理由や賃金を補正できるため、早めに窓口へ相談することが最も確実です。
離職証明書と離職票の関係を確認します
離職証明書は事業主が作成し、雇用保険被保険者資格喪失届に添えてハローワークへ提出する書類です。ハローワークはこの内容をもとに離職票(離職票-1・離職票-2)を発行し、賃金支払状況や離職理由から受給資格、給付日額、所定給付日数、給付制限の有無を判定します。記載が誤っていると給付内容に直接影響するため、正確な記載と確認資料の持参が求められます。
まずは事業主に訂正を求めるのが原則です
本来は事業主が誤記に気づいた時点で訂正し、ハローワークへ訂正を申し出ます。労働者側は離職前に事業主記載の離職理由を確認する機会があり、離職証明書の⑯欄(離職者本人の判断)で異議の有無を○で示し署名します。やむを得ず離職日までに確認できない場合でも、後から訂正を求めることができます。
事業主に訂正を求めるときのポイント
- 離職票-2の⑦欄(離職理由)と⑯欄(本人の判断)の記載内容を確認する
- 誤っている箇所(離職理由、賃金額、被保険者期間、生年月日など)を具体的に伝える
- 賃金台帳・出勤簿・雇用契約書・退職願など根拠資料の再確認を依頼する
- 訂正後の離職証明書・離職票の再交付を依頼し、ハローワーク提出を見届ける
事業主が訂正に応じないときはハローワークへ相談します
事業主が訂正に応じてくれない、連絡がつかない、退職時のトラブルで話し合いが困難な場合でも、労働者だけでハローワークへ相談できます。厚生労働省の注意書きでは、離職理由の判定は事業主の主張だけで決めるのではなく、労働者の主張と双方の資料を事実確認した上で最終的にハローワーク(安定所)が慎重に行うとされています。必要に応じてハローワークから事業主へ照会や協力要請が行われます。
補正に必要な書類(離職理由別・賃金欄別)
東京ハローワークの案内では、補正を申し立てる際に離職票(交付済みなら本人分と事業主控)と、正しい内容が分かる確認資料の提出を求められます。追加資料を求められる場合もあるため、コピーで構いませんので関係資料はできるだけ用意します。
| 補正したい欄 | 主な事例 | 持参いただく資料(例) |
|---|---|---|
| 離職理由⑦欄:会社都合 | 解雇、事業所都合の雇止め | 解雇通知書、労働者名簿、退職証明書、就業規則 |
| 離職理由⑦欄:期間満了 | 契約期間満了、更新なし | 雇用契約書、雇入通知書、契約更新通知書、タイムカード |
| 離職理由⑦欄:自己都合 | 労働者の判断による離職 | 退職願、退職届の写し |
| 離職理由⑦欄:定年・休職期間満了 | 定年退職、休職期間満了 | 就業規則、休職規程 |
| 賃金支払状況⑧〜⑫欄 | 賃金額・日数の誤り | 賃金台帳、給与明細、出勤簿、タイムカード |
賃金欄(⑧欄から⑫欄)の金額や日数を補正したいときは、正しい日数と金額が分かる賃金台帳と出勤簿(タイムカード)が中心資料になります。雇用契約書や就業規則だけでは賃金額の裏付けにならないため、給与計算の根拠が分かる資料を併せて用意します。
賃金欄の補正で求められることが多い資料
- 賃金台帳(過去6か月以上の賃金支払状況が分かるもの)
- 出勤簿またはタイムカード(賃金支払対象期間と被保険者期間の確認)
- 給与明細(賃金台帳の補助資料として)
- 労働条件通知書や雇用契約書(賃金形態の確認)
提出先と提出方法(窓口・郵送が原則)
提出先は事業所所在地を管轄するハローワークの雇用保険適用課です。様式は「離職票記載内容に関する補正願」や「雇用保険被保険者離職票記載内容訂正願」など、管轄により名称が異なる場合があります。大分労働局の様式では訂正欄(①〜⑭)と喪失原因、訂正理由(誤記入・錯誤・その他)を記入し、確認資料の種類にチェックして提出します。
補正申立ての提出手順
ハローワークでの対応の流れ
労働者がハローワークへ離職票の記載内容に誤りがある旨を申し立て、補正願と確認資料を提出します。
ハローワークが提出資料を精査し、必要に応じて追加資料の提出を求めます。
ハローワークから事業主へ事実確認の照会や資料提出の協力要請が行われます。事業主の主張と労働者の主張を資料で事実確認します。
最終的にハローワークが離職理由や賃金を判定し、職権で離職票を補正して再交付します。事業主の協力が得られなくても資料等から補正が可能です。
注意点・よくある失敗
補正でつまずきやすいポイント
- 離職理由が特定受給資格者・特定理由離職者に該当するかで所定給付日数や給付制限が変わるため、安易に自己都合で処理しない
- 賃金欄の誤りは所定給付日数の算定にも影響するため、賃金台帳と出勤簿の両方を用意する
- 退職願や解雇通知書など離職理由を示す一次資料を紛失している場合は、雇用契約書や就業規則、給与明細など代替資料と事情説明で補う
- 離職票が未交付でも離職証明書の段階で補正を求めることができるため、交付前でも早めに相談する
よくある質問
退職願を出しましたが、実際は上司からの退職勧奨や労働条件の重大な問題が原因です。会社都合に補正できますか?
可能です。退職願の有無だけで決まるわけではありません。ハローワークは事業主の主張(⑦欄)と労働者の主張(⑦欄・⑯欄)を双方の資料で事実確認し最終判定します。退職勧奨の募集要綱、労働条件の低下を示す賃金台帳や通知書、就業環境に関する資料など、主張を裏付ける資料を持参してハローワークへ補正を申し立ててください。
賃金台帳や出勤簿は会社が持っていて手元にありません。補正はできませんか?
手元になくても申し立ては可能です。給与明細、源泉徴収票、通帳の入金記録、タイムカードの写しなど、賃金額や勤務日数が分かる資料をできるだけ用意してハローワークへ相談します。ハローワークから事業主へ資料提出の協力要請が行われ、提出された賃金台帳等と照合して補正が検討されます。
離職票自体がまだ届いていませんが、離職証明書の誤りに気づきました。どうすればよいですか?
資格喪失届と離職証明書は事業主が離職日の翌々日から10日以内にハローワークへ提出するのが原則です。まだ提出前であれば事業主へ訂正を依頼します。既に提出済みで離職票が未交付なら、管轄ハローワークへ早めに相談し、離職証明書の補正と離職票交付時の正しい記載を求めることができます。離職票交付後でも補正は可能です。
まとめと次の行動
事業主が離職証明書の訂正に応じないときは、一人で抱え込まず管轄ハローワークへ離職票の補正を申し立てます。離職理由別・賃金欄別の確認資料を用意し、窓口または郵送で補正願を提出すれば、ハローワークが事業主へ照会し職権で補正します。離職理由や賃金の誤りは給付内容に直結するため、離職票を受け取ったらすぐに内容を確認し、疑問があれば速やかに雇用保険適用課へ相談してください。
公式情報と問い合わせ先
本記事は2026年8月26日時点の厚生労働省と東京ハローワーク等の公式情報で確認しています。手続きの詳細や様式は管轄ハローワークにより異なる場合があるため、提出前に管轄の公共職業安定所へご確認ください。