育児時短就業給付金は原則として事業主がハローワークへ申請しますが、会社が手続きしてくれない場合でも被保険者本人が受給資格確認と支給申請を直接提出できます。ただし「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」の届出だけは事業主の作成が必要で、最初の支給対象月の初日から4か月以内の提出期限を過ぎると支給を受けられなくなる可能性があります。まずは事業所の所在地を管轄するハローワークへ早めに相談し、必要書類と期限を確認します。

この記事で扱う状況と対象者

この記事は、2025年4月1日以降に2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業し、育児時短就業給付金の支給要件を満たすにもかかわらず、事業主がハローワークへの申請を進めてくれない方を対象にしています。全国共通の雇用保険制度の原則を解説します。個別の支給可否は管轄ハローワークの判断となります。

対象者の確認リスト

  • 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者である
  • 2歳未満の子を養育するために1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業している
  • 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き同一の子について時短就業を開始した、または時短開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の完全月が12か月ある(やむを得ない理由で30日以上賃金を受けられなかった期間は加算可)

原則は事業主申請、ただし本人が直接申請することも可能

厚生労働省のパンフレット(2026年8月1日時点版)9頁では、育児時短就業給付金の手続きは被保険者を雇用している事業主が行うことが原則とされています。事業主が「育児時短就業開始時賃金の届出」「受給資格確認」「支給申請」を管轄ハローワークへ行います。事業主が支給申請を行う場合は、開始時賃金の届出と受給資格確認を初回支給申請と同時にまとめて行うこともできます。

同一の子について育児休業給付の対象となる育児休業から14日以内に引き続き時短就業を開始した場合は、開始時賃金の届出の提出は不要です。この場合でも受給資格確認と支給申請は必要です。

会社が申請してくれないときの相談順序

事実関係を整理し記録する

いつから時短就業を開始したか、週の所定労働時間を何時間短縮したか、事業主へいつ口頭・書面で申請を依頼したかをメモします。賃金台帳や労働条件通知書、育児短時間勤務申出書のコピーがあるとハローワークでの相談が円滑です。

事業所の所在地を管轄するハローワークへ相談する

雇用保険の手続きは、事業所の所在地を管轄するハローワークが窓口です。電話ではなく、決定通知書や賃金台帳などを持参して窓口で相談すると、受給資格の有無と、どの書類が不足しているかをその場で確認できます。厚生労働省の「育児休業等給付について」ページでも、申請先はハローワーク、問い合わせ先は育児休業等給付コールセンター(0570-200-406、平日8:30〜17:15)と案内されています。電子申請(e-Gov)を利用できる場合も、管轄は同じです。

事業主に開始時賃金証明書の作成を依頼し、並行して本人が受給資格確認票を準備する

ハローワークで「本人が直接申請したい」旨を伝えると、事業主が作成すべき「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」と、本人が記入する「育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)支給申請書」の書き分けを案内してもらえます。個人番号(マイナンバー)の記載、払渡希望金融機関の指定、添付書類の範囲を確認します。過去に育児休業給付等の給付で登録した口座や、マイナポータルの公金受取口座を利用できる場合もあります。

申請期限:4か月以内を厳守する

提出期限は厳格です。期限を過ぎると支給対象月であっても支給を受けられなくなります。

支給申請の提出期限
手続き提出期限の起算日期限の例
受給資格確認のみ、または受給資格確認+初回支給申請最初の支給対象月(育児時短就業開始日の属する月)の初日7月10日に時短開始 → 最初の支給対象月は7月 → 10月31日まで
2回目以降の支給申請(2か月ごとに2支給対象月をまとめて申請が原則)ハローワークが交付する「次回支給申請日指定通知書」に記載された期間(原則として次回支給対象月の初日から4か月以内)9月・10月が次回支給対象月 → 12月31日まで(通知書で指定)

例えば4月21日に時短就業を開始した場合、4月と5月の2か月分をまとめて7月31日までに初回申請します。被保険者が希望すれば1か月ごとに申請することも可能です。期限の最終日が土日祝日に当たる場合の取扱いは、ハローワークの指定通知書の記載に従ってください。

必要書類と提出先

主な提出書類はパンフレット10〜11頁で次のとおり示されています。提出先は共通して事業所の所在地を管轄するハローワークです。書面のほかe-Gov電子申請も利用できます。特定法人(資本金1億円超など)の事業所は電子申請が義務化されています。

提出書類(初回)

  • 雇用保険被保険者所定労働時間短縮開始時賃金証明書(事業主作成)+賃金台帳・出勤簿・労働条件通知書・育児短時間勤務申出書等で開始日・賃金額・所定労働時間を確認できる書類(開始前・開始後それぞれ)
  • 育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)支給申請書(個人番号記載、払渡希望金融機関欄あり)+母子健康手帳・住民票・医師の診断書等で育児の事実・出産予定日・出生日を確認できる書類(同一子で育児休業給付受給時は省略可)
  • 支給対象月の賃金・週所定労働時間を確認できる書類(賃金台帳・出勤簿等。就業規則等で短縮が前提と分かる場合を除き週20時間未満の転換は被保険者資格喪失に注意)

2回目以降は「育児時短就業給付金支給申請書」と、支給対象月の賃金・労働時間を確認できる書類を提出します。週所定労働時間に変更がなければ、労働時間確認書類の再提出は省略できます。

支給までの流れと注意点

ハローワークでは申請書の記載内容を賃金台帳等で確認し、要件を満たせば支給決定を行います。支給の可否と支給額は「育児時短就業給付金支給決定通知書」で通知され、支給決定から指定口座への振込まで約1週間かかります。

注意点

  • 支給額は原則として各月に支払われた賃金額×10%ですが、時短開始時賃金月額(上限496,200円・下限96,090円、2027年7月31日まで)と支給限度額(484,121円)、最低限度額(2,562円)による調整があります。60円未満の端数処理や支給率調整(90%超100%未満の場合)に注意してください。
  • 月の初日から末日まで続けて被保険者である月、週所定労働時間を短縮して就業した期間がある月、育児休業給付・介護休業給付を受給していない月、高年齢雇用継続給付の対象でない月のすべての要件を満たす月のみが支給対象です。
  • 支給対象期間は原則として時短開始日の属する月から時短終了日の属する月までですが、子が2歳に達する日の前日の属する月、産前産後休業・育児休業・介護休業開始日の前日の属する月などで終了します。
  • 2025年4月1日以前から時短就業に相当する就業をしていた方は、同日を開始日とみなして要件を満たせば同年4月以降を支給対象とできますが、賃金が低下していない月は不支給となることがあります。

よくある質問

会社が申請してくれない場合、受給資格確認だけでも本人が直接ハローワークへ出せますか?

はい、被保険者の方が希望する場合は、受給資格確認票を本人が管轄ハローワークへ直接提出できます。2回目以降の支給申請についても同様に本人が直接提出可能です。ただし最初の「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」の届出は事業主が行う必要がありますので、ハローワークで事業主への依頼方法を確認してください。

申請期限の「4か月以内」はどの日から数えますか?

初回の場合は「最初の支給対象月の初日」から4か月以内です。時短開始日が7月10日なら最初の支給対象月は7月で、10月31日が期限です。2回目以降はハローワークが交付する「次回支給申請日指定通知書」に、次回支給対象月の初日から4か月以内の期間が指定されます。通知書の記載を必ず確認してください。

毎月の支給申請は2か月まとめが必須ですか?

原則として2つの支給対象月について2か月ごとに申請しますが、被保険者の方が希望すれば1つの支給対象月について1か月ごとに申請することも可能です。いずれの場合も期限内の提出が必要です。

まとめ:まずは管轄ハローワークへ早めに相談を

育児時短就業給付金は事業主経由が原則ですが、会社が動かないときは被保険者本人がハローワークへ直接受給資格確認と支給申請を行えます。開始時賃金証明書のみは事業主の作成が必須のため、ハローワークで依頼文面や提出順序を確認し、最初の支給対象月の初日から4か月以内の期限を守って手続きしてください。必要書類は賃金台帳や母子健康手帳など事実を確認できるものが中心です。

手続きに迷った場合は、事業所の所在地を管轄するハローワークへ、賃金の支払状況と所定労働時間の短縮が分かる資料を持参して相談してください。最新の支給要件や限度額は毎年8月1日に改定されることがあるため、申請前に厚生労働省の最新パンフレットを確認することをおすすめします。