雇用保険の被保険者氏名変更届は令和2年1月に廃止され、在職中の単独届出は原則不要です。マイナンバーと基礎年金番号が結びついているため、資格喪失や転勤、育児・介護・高年齢給付の申請時に新氏名を併記する方法に変わりました。一方、健康保険・厚生年金は原則手続き不要ですが、マイナンバー未連携等の例外では被保険者氏名変更(訂正)届を速やかに提出します。手続き先とタイミングが異なるため、事業主と本人の役割を整理して進めます。

結論早見表:雇用保険と健康保険・厚生年金の違い

同じ氏名変更でも、制度で扱いが分かれます。まずは全体像を確認します。

制度別の要否と提出先
制度単独の氏名変更届氏名変更が必要になる場面提出先期限
雇用保険廃止(令和2年1月)単独不要資格喪失届・転勤届・個人番号登録変更届・高年齢/育児/介護給付の申請時に新氏名を併記ハローワーク(併記する手続きと同時)併記する各手続きの期限に準ずる(例:資格喪失は事実の翌日から10日以内)
健康保険・厚生年金原則不要マイナンバー未連携、協会けんぽのみ加入、海外居住者、短期在留外国人のいずれかに該当するとき年金事務所(事業主が電子申請・郵送・窓口)速やかに(申し出を受けたら遅滞なく)

雇用保険で氏名変更届が廃止された経緯

ハローワークの手引きによると、雇用保険被保険者氏名変更届は令和2年1月に廃止されました。マイナンバーと基礎年金番号の連携により、氏名は基礎年金番号等で管理できるようになったため、単独様式での届出を省略したものです。厚生労働省の雇用保険制度改正でも同趣旨の見直しが示されています。

雇用保険で氏名を併記する8つの手続き

  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用継続交流採用終了届
  • 雇用保険被保険者転勤届
  • 個人番号登録・変更届
  • 高年齢雇用継続基本給付金の支給申請(受給資格確認を含む)
  • 高年齢再就職給付金の支給申請
  • 育児休業給付金の支給申請(受給資格確認を含む)
  • 介護休業給付金の支給申請

いずれも事業主が手続きを行い、申請書内の氏名変更記載欄に変更後の氏名を記入します。変更があった都度ではなく、次にこれらの手続きを行う機会に併せて届け出る仕組みです。被保険者本人は、結婚などで氏名が変わったら速やかに事業主へ申し出て、マイナンバーの登録状況と併記予定を共有しておきます。

健康保険・厚生年金で氏名変更届が必要な例外

日本年金機構によると、健康保険・厚生年金では従業員の氏名変更があった場合、原則として手続きは不要です。ただし次のいずれかに該当する方は、事業主が速やかに被保険者氏名変更(訂正)届を年金事務所へ提出します。

例外に該当する4パターン

  • マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない方
  • 健康保険(全国健康保険協会管掌)のみに加入している方(マイナンバー結びつき済みでも必要)
  • マイナンバーを有していない海外居住者
  • 短期在留外国人

提出方法は電子申請、郵送、窓口持参のいずれかです。添付書類は資格確認書、高齢受給者証、特定疾病療養受療証、限度額適用認定証等が交付されている場合に限り、被扶養者分も含めて添付します。氏名のフリガナのみの変更では添付は不要で、基礎年金番号通知書や年金手帳の添付は不要です。変更後の資格確認書等が交付されたら、変更前のものは従業員から回収し速やかに返納します。

なぜ分かりにくいのか:マイナンバー連携の違い

両制度ともマイナンバー連携を前提に手続きが簡素化されていますが、取扱いは異なります。雇用保険は単独届出を廃止して併記に一本化したのに対し、健康保険・厚生年金は原則不要としつつ例外を残しています。事業主はどちらの制度でも手続き主体ですが、提出先がハローワークと年金事務所で別れるため、社内では雇用保険と社会保険の担当間で情報共有が必要です。

手続き主体と確認事項
確認項目雇用保険健康保険・厚生年金
手続き主体事業主がハローワークへ(被保険者は事業主へ申し出)事業主が年金事務所へ(被保険者は事業主へ申し出)
マイナンバー連携済み単独届出不要、次回手続き時に併記原則不要
マイナンバー未連携等同じく併記で対応(別途個人番号登録・変更届も併記対象)速やかに氏名変更(訂正)届を提出
添付書類各併記手続きに準ずる資格確認書等があれば添付、年金手帳等は不要

手続きの流れと用意するもの

氏名が変わったら事業主へ申し出、マイナンバーの紐づけ状況を確認する

結婚等で氏名が変わったら、住民票の写しや戸籍謄本等で新氏名を確認し、事業主へ申し出ます。事業主はマイナンバーと基礎年金番号が結びついているか、協会けんぽのみ加入等に該当しないかを確認します。

雇用保険は次回手続きまで待機し、併記欄に新氏名を記入する

事業主は次に資格喪失届や転勤届、育児・介護・高年齢給付の申請を行う際に、該当書類の氏名変更欄へ変更後の氏名を記入してハローワークへ提出します。単独で氏名変更を届けたい場合でも、併記対象の手続きが発生するまで提出を待ちます。

健康保険・厚生年金は例外該当時のみ速やかに年金事務所へ届け出る

例外に該当する場合は、事業主が被保険者氏名変更(訂正)届を作成し、資格確認書等が交付されていれば添付して年金事務所へ速やかに提出します。該当しない場合は手続き不要ですが、資格確認書の氏名はマイナンバー連携により更新されるため、変更後の資格確認書等が届いたら旧証を回収・返納します。

事業主・本人の確認リスト

よくある質問

結婚で氏名が変わりました。雇用保険の氏名変更届を今すぐハローワークへ提出できますか?

単独の氏名変更届は令和2年1月に廃止されたため、単独では提出できません。次に資格喪失届や転勤届、育児・介護・高年齢給付の申請など、いずれかの手続きを行う際に、その申請書の氏名変更欄へ新氏名を記入してハローワークへ提出します。それまでの間は事業主へ申し出て、次回手続きに備えておいてください。

健康保険・厚生年金はマイナンバーを届け出済みなら、氏名変更の手続きは不要ですか?

原則として不要です。ただし、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない方、協会けんぽのみ加入の方、海外居住者、短期在留外国人のいずれかに該当する場合は、事業主が被保険者氏名変更(訂正)届を速やかに年金事務所へ提出します。該当しない場合でも、資格確認書等が交付されていれば新氏名での再交付後に旧証を返納します。

扶養している家族の氏名が変わったときも同じ届出でよいですか?

いいえ、被保険者本人の氏名変更届ではありません。健康保険被扶養者(異動)届を事業主が提出します。このとき被保険者本人の資格確認書等を一緒に添付する必要はありません。被扶養者に交付されている資格確認書等を事業主へ提出し手続きします。

まとめと次の行動

雇用保険では令和2年1月の廃止以降、氏名変更は必ず何らかの手続きに併記します。健康保険・厚生年金では原則不要ですが、例外では速やかな届出が必要です。事業主は申し出を受けたら、①マイナンバー連携状況の確認、②雇用保険は次回併記手続きの期限管理、③健康保険・厚生年金は例外判定と速やかな届出、を分けて対応します。本人は氏名変更後すぐ事業主へ申し出、資格確認書等の新旧管理に協力します。手続き先が異なるため、社内の労務・社会保険担当間で情報を共有しておくと、資格喪失や給付申請時に氏名不一致で返戻される事態を防げます。