賃金台帳は、事業場ごとに労働者一人ひとりの賃金、労働日数、労働時間などを記録する法定帳簿です。賃金を支払うたびに必要項目を記入し、法定期間保存します。給与明細と役割が異なるため、給与明細を交付しているだけでは、賃金台帳の項目を満たしたことにはなりません。

賃金台帳の基本

賃金台帳について、作成単位、対象、記入時期、保存期間、提出の有無を整理します。
確認項目内容
作成する人労働者を使用する事業主
作成単位事業場ごと、労働者ごと
対象労働基準法上の労働者。正社員だけに限りません。
記入時期賃金を支払う都度、遅滞なく記入
主な内容氏名、性別、賃金計算期間、労働日数・時間、時間外・休日・深夜労働、賃金の内訳、控除額
保存期間原則5年。ただし当分の間は3年
定期提出労働基準監督署へ毎月提出する帳簿ではありません。事業場で保存し、確認を求められた場合に提示できるようにします。

誰の賃金台帳を作るのか

賃金台帳は、事業場で使用する労働者ごとに作成します。正社員だけでなく、パート、アルバイト、有期契約社員なども、労働基準法上の労働者に該当すれば対象です。会社全体の合計表だけではなく、各人の労働時間と賃金内訳を確認できる状態にします。

賃金台帳に必要な8つの記載項目

一般的な常用労働者の賃金台帳では、労働者ごとに次の事項を記録します。

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 賃金計算期間
  4. 労働日数
  5. 労働時間数
  6. 時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数
  7. 基本給、手当、賞与、現物給与など、賃金の種類ごとの金額
  8. 税、社会保険料、労使協定に基づく控除など、賃金から控除した金額

単に「総支給額」と「差引支給額」だけを記録するのではなく、基本給・各種手当・賞与などの支給項目と、控除項目を分けます。残業が深夜に及んだ場合は、該当時間を時間外労働と深夜労働の双方で確認できるようにします。

賃金支払いごとの作成手順

タイムカード、勤怠システム、休暇申請、残業・休日労働の記録を締め、労働日数と労働時間を確定します。

基本給、各種手当、割増賃金、賞与、現物給与などを、就業規則・賃金規程・労働条件と照合して計算します。

税、社会保険料、雇用保険料、労使協定に基づく控除などを確認し、支給項目と控除項目を労働者別に記録します。

給与明細、振込データ、勤怠記録と賃金台帳を照合し、賃金を支払う都度、遅滞なく記入を完了します。

保存期間の起算日を確認し、紙または電子データを、必要な期間にわたり検索・確認できる状態で保管します。

給与明細と賃金台帳の違い

給与明細と賃金台帳は同じ給与計算データから作ることがありますが、目的と必要項目が異なります。
比較項目賃金台帳給与明細
主な目的事業主が労働時間と賃金の計算・支払内容を法定帳簿として記録する労働者がその回の支給額・控除額・差引額を確認する
管理する人事業主が事業場で保存労働者へ交付し、労働者も手元で確認・保存
対象期間賃金計算期間ごとに継続して記録通常は各給与・賞与の支払いごと
主な項目氏名、性別、賃金計算期間、労働日数・時間、時間外・休日・深夜、賃金内訳、控除額支給項目、控除項目、差引支給額など。表示内容は会社の様式により異なる
代用の可否法定項目を労働者別に確認できる必要がある必要項目が不足する給与明細だけでは賃金台帳にならない

保存期間は原則5年、現在は3年

賃金台帳などの労働関係記録は、2020年4月1日から法定保存期間が5年へ延長されました。ただし、経過措置として当分の間は3年です。賃金台帳は原則として最後に記入した日から数えますが、その記録に対応する賃金の支払期日が後になる場合は、後の支払期日が起算日です。

締日と支払日が異なる場合の保存期間の起算例です。
例起算日の考え方
4月1日から4月30日までの勤怠・賃金を4月30日に締め、5月15日に支払う最後の記入日より賃金支払期日のほうが遅ければ、5月15日から保存期間を数えます。
退職者分を最後に記入した後、後日精算して賃金を支払う対応する賃金の支払期日が最後の記入日より遅い場合は、その支払期日を確認します。
複数の給与締日・支払日がある賃金計算期間と支払日を対応付け、保存期限を一律の年度末だけで管理しないようにします。

給与ソフトや電子データで管理するときの確認点

厚生労働省の様式第20号は確認用の公式モデルです。実務では給与ソフトなどを使う場合でも、必要項目が欠けず、勤怠記録・賃金規程・振込内容と照合でき、保存期間中に労働者別の記録を確認できるようにします。

電子管理を始める前と、給与ソフトを変更するときに確認する項目です。

よくある不備

賃金台帳の作成・保存で避けたい主な不備です。

  • 総支給額と手取り額だけを記録し、基本給・手当・控除の内訳がない
  • 所定労働時間だけを登録し、実際の労働日数・労働時間を反映していない
  • 時間外・休日・深夜労働時間を区分していない
  • 正社員分だけを作り、パート・アルバイト分がない
  • 給与明細の控えだけを保存し、法定項目の不足を確認していない
  • 3年の起算日を給与締日だけで判断し、後の賃金支払日を見落とす
  • 給与ソフトの変更時に旧データを閲覧できなくする
  • 退職者のデータを退職と同時に削除する

賃金台帳に関するよくある質問

賃金台帳は誰の分を作成しますか?

事業場で使用する労働者ごとに作成します。雇用形態だけで対象外にせず、労働基準法上の労働者かを確認してください。

給与明細を保存すれば賃金台帳の代わりになりますか?

必要項目が不足する給与明細だけでは代わりになりません。帳票名ではなく、法定項目を労働者別に確認できるかで判断します。

賃金台帳は何年保存しますか?

2026年7月29日時点では当分の間3年です。起算日も確認して保存期限を管理してください。

賃金台帳は労働基準監督署へ提出しますか?

通常の定期提出はありません。事業場で保存し、確認を求められた場合に提示できる状態にします。

次にすること

まず、現在使っている給与ソフトまたは表計算の帳票を1人分・1賃金計算期間分出力し、8つの記載項目がそろっているか確認してください。次に、過去データの保存開始日と削除予定日を見直し、勤怠・給与明細・振込データとの照合手順を決めます。就業規則や労働条件通知書に記載した賃金条件とも一致しているか確認してください。

就業規則の届出方法を確認する賃金、労働時間、休暇、退職などの共通ルールを定める就業規則の作成・届出・周知を確認できます。パート・有期雇用の労働条件通知書を確認するパート・有期雇用労働者へ明示する労働条件と、2026年10月1日以降の追加項目を確認できます。

この記事は、e-Gov法令検索の労働基準法、厚生労働省の主要様式ページ、賃金台帳様式第20号、保存期間延長の公式資料を2026年7月29日に確認して作成しています。労働者区分や記載項目の特例、保存方法に個別判断が必要な場合は、事業場を管轄する労働基準監督署へ確認してください。