相続税は金銭一括納付が原則で、延納でも金銭で納めることが困難な場合に限り、納税者の申請により相続財産での納付(物納)が認められます。物納は延納の次に検討する手続きで、延納が不要な方が直接選ぶ制度ではありません。申請は納期限までに物納申請書と物納手続関係書類を税務署長へ提出します。
延納との違いと物納の4要件
物納は延納で分割しても金銭納付が困難な金額を限度とします。相続時精算課税の適用財産や贈与税の納税猶予特例の非上場株式等・事業用資産は対象にできません。加算税、利子税、延滞税、連帯納付責任額は物納の対象になりません。
| 要件 | 公式の扱い | 確認点 |
|---|---|---|
| 延納困難が前提 | 延納によっても金銭納付困難な事由があり困難な金額が限度 | 延納不要な理由だけでは物納できません |
| 国内財産と順位 | 課税価格の基礎となった国内相続財産を第1から第3順位で充てる | 後順位は特別事情や先順位に適当な価額なしの場合のみ |
| 不適格・劣後でない | 管理処分不適格でなく劣後は他に適当な財産がない場合のみ | 担保設定や境界不明などは不適格です |
| 期限までの提出 | 納期限または納付すべき日までに申請書と手続書類を税務署長へ提出 | 期限後の新規申請はできません |
物納できる財産の順位
物納財産は日本国内にある相続財産のうち、定められた順位で充てます。先順位に充てられる適当な価額の財産があるのに後順位だけを選ぶことはできません。
物納財産の順位を確認します
- 第1順位:不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等と劣後該当分
- 第2順位:非上場株式等と劣後該当分
- 第3順位:動産
- 特定登録美術品は順序にかかわらず一定書類で充てられる場合があります
申請期限と書類延長の届出
物納申請書と物納手続関係書類は納期限または納付すべき日までに提出します。期限までに書類がそろわない場合は、物納手続関係書類提出期限延長届出書を提出することで、1回につき3か月を限度として最長1年まで延長できます。延納の書類延長(最長6か月)と期間が異なる点に注意します。
審査期間と収納価額
税務署長は物納申請期限から3か月以内に許可または却下を行います。申請財産の状況により最長9か月まで延長される場合があります。物納財産の収納価額は原則として相続税の課税価格計算の基礎となった価額です。小規模宅地等の特例適用財産は特例適用後の価額です。
却下されたときの再申請と延納への変更
不適格や劣後を理由に却下されたときは、却下の日の翌日から20日以内に他の財産での再申請を1回に限り行えます。延納困難なしを理由に却下されたときは、その税額について延納を申請できます。許可後に土壌汚染などの瑕疵が判明した場合は除去などの措置を求められ、許可後5年以内の措置不能では許可取消しに注意します。
物納申請では必要書類の訂正や収納措置の期間について利子税がかかります。却下やみなし取下げでは納期限翌日から却下・取下げ日まで利子税がかかり、自ら取り下げた場合は延滞税がかかります。
延納から物納へ変える特定物納
延納許可後に履行が困難になった場合は、申告期限から10年以内に限り、分納期限未到来の税額について延納から物納へ変更できます。これを特定物納といいます。利子税は当初の延納条件で物納財産納付までの期間に応じ納付し、収納価額は特定物納申請時の価額です。平成18年4月1日以後の相続開始による取得が対象です。
提出方法と相談先
物納の手引(手続編・整備編)や様式集は国税庁の延納・物納申請等のページに掲載されています。財産に応じた書類が多いため、期限前に税務署の相談窓口へ確認します。
国税庁 No.4214 相続税の物納国税庁 No.4214 相続税の物納を確認する国税庁 延納・物納申請等国税庁 延納・物納申請等の手引と様式を確認する延納を経ずに直接物納できますか。
延納によっても金銭納付が困難なことが要件のため、延納不要な方が直接物納を選ぶ制度ではありません。まず延納での納付可能性を確認します。
先順位の財産があるのに動産などで物納できますか。
後順位は税務署長が特別の事情を認める場合や先順位に適当な価額がない場合に限ります。原則は第1順位から順に充てます。
物納の書類が期限に間に合わない場合はどうしますか。
物納手続関係書類提出期限延長届出書で1回3か月・最長1年まで延長できます。申請書自体の期限は延びないため期限内の提出が必要です。