令和8年4月から、在職老齢年金の支給停止基準額は月51万円から65万円へ引き上げられました。基本月額(老齢厚生年金)と総報酬月額相当額(賃金と賞与)の合計が65万円以下なら年金は全額支給され、超えた場合のみ超えた額の半分が支給停止となります。70歳以上の方も対象で、老齢基礎年金は調整されません。

この改正は誰に関係しますか

厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金を受給している60歳以上の方が対象です。65歳以上で継続雇用や再雇用で働く方、70歳以上で厚生年金保険の適用事業所で働く方も含まれます。老齢基礎年金のみを受給している方は対象外です。

対象と対象外の区分

  • 対象:60歳以上で厚生年金保険に加入しながら老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給している方
  • 対象:65歳以上で在職しながら老齢厚生年金を受給している方(継続雇用・再雇用含む)
  • 対象:70歳以上で適用事業所に勤務し、標準報酬月額相当額がある方(在職定時改定の対象)
  • 対象外:老齢基礎年金のみを受給している方(基礎年金は在職老齢年金の調整対象外です)
  • 対象外:厚生年金保険に加入していない自営業やフリーランスの方

令和8年4月前後で何が変わりますか

令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号)により、令和8年4月から基準額が変わります。厚生労働省の資料では法律成立時62万円と案内されていましたが、令和8年度は賃金変動を踏まえ65万円で施行されます。

改正前後の基準額と比較
区分改正前(令和8年3月まで)改正後(令和8年4月から)
基準額(支給停止調整額)51万円(令和7年度)65万円(令和8年度)
判定式基本月額+総報酬月額相当額が51万円超で一部停止基本月額+総報酬月額相当額が65万円超で一部停止
超えた場合の計算(合計-51万円)÷2が支給停止額(合計-65万円)÷2が支給停止額
全額支給の範囲合計が51万円以下合計が65万円以下
全額停止の目安(基本月額10万円の場合)合計が71万円で全額停止合計が85万円で全額停止(75万円ではなく85万円が正しい)

支給停止額の計算方法

計算は次の3つの金額を用います。日本年金機構の定義に基づく正確な考え方で整理します。

計算に使う3つの金額

  1. 基本月額:加給年金額を除いた老齢厚生年金(年額)を12で割った額。共済組合等の年金がある場合は合算します。
  2. 総報酬月額相当額:毎月の賃金の標準報酬月額+1年間の賞与の標準賞与額を12で割った額。70歳以上の方はそれぞれ相当額で計算します。
  3. 合計額:基本月額+総報酬月額相当額

合計額が基準額以下の場合は全額支給されます。超える場合は次の式で調整後の年金月額を求めます。

調整後の年金月額の計算式

  • 改正前(51万円基準):調整後月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-51万円)÷2
  • 改正後(65万円基準):調整後月額=基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-65万円)÷2

具体例で見る支給額の変化

日本年金機構が示す具体例(基本月額10万円、総報酬月額相当額46万円:標準報酬月額36万円+標準賞与額120万円を12で割った10万円)で、改正前後の違いを確認します。合計は10万円+46万円=56万円です。

具体例(合計56万円)の支給額
区分計算支給額支給停止額
改正前(51万円基準)10万円-(56万円-51万円)÷27.5万円2.5万円
改正後(65万円基準)56万円は65万円以下なので調整なし10万円(全額支給)0円

改正前は2万5千円が支給停止されていましたが、改正後は全額支給されます。このように月5万円の賃金と年金の合計枠が広がることで、働き控えをせずに済む方が増えます。

厚生労働省の例でも確認します

厚生労働省の見直し資料では、賃金45万円+厚生年金10万円=55万円の例が示されています。現行50万円基準では5万円の半額2万5千円が停止しますが、見直し後62万円(令和8年度は65万円)基準では停止はなく、従来停止されていた2万5千円がそのまま支給されます。

70歳以上の方と在職定時改定の扱い

70歳以上の方は厚生年金保険の被保険者にはなりませんが、在職老齢年金の調整では70歳以上の方も総報酬月額相当額の計算対象です。毎年9月1日を基準日とする在職定時改定により、働いた期間の標準報酬が年金額に反映され、10月に改定後の年金額が通知されます。手続きは事業主が届出を行うため、ご本人の申請は不要です。

70歳以上の方のポイント

  • 在職老齢年金の支給停止判定は70歳以上も対象です
  • 在職定時改定は毎年1回、9月1日基準で標準報酬を再計算し年金額を改定します
  • 改定は届出不要で自動的に行われ、年金事務所から通知が届きます
  • ねんきんネットで最新の標準報酬月額相当額を確認できます

手続きは必要ですか

在職老齢年金の支給停止に新たに申請書を提出する必要はありません。事業主が毎月・賞与時に提出する算定基礎届や月額変更届、賞与支払届、70歳以上被用者算定基礎届などに基づき、日本年金機構が自動的に判定します。支給停止額が変わるときは年金振込通知書などでお知らせが届きます。

ご自身で確認すること

  1. ねんきんネットで基本月額(老齢厚生年金の月額)と標準報酬月額相当額を確認する
  2. 合計が65万円を超えるか計算する
  3. 超える場合は(合計-65万円)÷2がおおよその支給停止額と把握する
  4. 年金額や賃金が変わったときは翌月以降の反映を待つ

よくある誤解と注意点

誤解しやすいポイント

  • 誤解:基準額が65万円なら給与65万円まで大丈夫→実際は基本月額と給与の合計で判定します。年金10万円なら給与55万円までが全額支給の目安です。
  • 誤解:老齢基礎年金も減る→基礎年金は減りません。厚生年金のみが停止対象です。
  • 誤解:65万円を超えると年金が全額止まる→超えた額の半分のみ停止です。例えば合計が70万円なら(70万円-65万円)÷2=2万5千円のみ停止です。
  • 注意:賞与が多い月は標準賞与額を12で割った額が加算されるため、合計が高くなります。
  • 注意:共済組合等の年金がある方は合算した基本月額で判定します。

早見表はどこで見られますか

日本年金機構のページでは、基準額ごとの支給停止額を一覧にした在職老齢年金早見表(PDF)と、働きながら年金を受給する皆さま向けのチラシを公開しています。月収と年金額の組み合わせで停止額をすぐに確認できます。PDFは公式サイトのリンクからご覧ください。

関連する手続き

在職老齢年金とあわせて確認したい手続きです。老齢年金請求書の審査状況、ねんきんネットでの反映確認、70歳以上被用者の届出先の違いを整理しています。

あわせて確認したいページ

  • 老齢年金請求書を提出した後は、1~2か月で年金証書、さらに1~2か月で年金振込通知書が届きます。審査状況が反映されないときは年金事務所へお問い合わせください。
  • ねんきんネットの標準報酬月額は、事業主の届出から反映まで数週間かかる場合があります。反映されないときは事業主の届出状況を確認してください。
  • 70歳以上被用者算定基礎届は、通常の算定基礎届と同じ時期(7月1日~7月10日)に事務センターまたは年金事務所へ提出し、ハローワークへの提出は不要です。

よくある質問

令和8年3月以前にすでに支給停止されていた年金は、4月から自動的に増えますか?

はい。令和8年4月分の年金から新たな基準額65万円で再計算され、支給停止額が減るまたは解消される方は、4月分(6月支給)から増額された年金が支給されます。改めて請求手続きは不要です。

65万円を超えると年金は全額支給停止になりますか?

いいえ。超えた額の半分のみが支給停止です。例えば基本月額10万円、総報酬月額相当額60万円で合計70万円の場合、(70万円-65万円)÷2=2万5千円が停止され、7万5千円が支給されます。全額停止は基本月額が非常に高い場合に限られます。

老齢基礎年金も在職老齢年金で減りますか?

いいえ。老齢基礎年金は在職老齢年金の調整対象外で、賃金がいくら高くても全額支給されます。調整されるのは老齢厚生年金(報酬比例部分)のみです。

賞与があると計算はどう変わりますか?

1年間の標準賞与額を12で割った額を、毎月の標準報酬月額に加えて総報酬月額相当額とします。賞与が多い年は総報酬月額相当額が高くなり、支給停止額が増えることがあります。標準賞与額の上限は1回あたり150万円です。

公式情報と確認日

本記事は2026年8月28日時点の日本年金機構『在職老齢年金制度が改正されました』(更新日2026年4月1日)と厚生労働省『在職老齢年金制度の見直しについて』の一次情報に基づき作成しています。基準額は毎年度賃金変動で改定されるため、最新年度の額は日本年金機構のページでご確認ください。個別の支給額は年金事務所またはねんきんダイヤル(0570-05-1165)へお問い合わせください。