会社が事業主証明を拒否しても、労災の休業(補償)等給付は請求できます。未証明のまま自己判断で提出する前に、事業所所在地を管轄する労働基準監督署へ連絡し、証明を得られない事情と提出方法を確認してください。労災に当たるかを決めるのは会社ではなく労働基準監督署長です。
結論:事業主証明がなくても請求できます
厚生労働省は、会社が責任を認めない場合でも労働者本人が請求でき、労働基準監督署長が支給・不支給を決めると案内しています。会社が事業主証明を拒否するなど、証明を得られない場合も請求できます。
| 状況 | 請求手続での考え方 |
|---|---|
| 会社が「労災ではない」と言う | 会社の見解だけで請求不可にはなりません。労働基準監督署長が労災に当たるかを判断します。 |
| 会社が請求書の事業主証明を拒否する | 証明がない請求書は要件不備となりますが、絶対に受け付けないものではありません。先に管轄の労働基準監督署へ相談します。 |
| 会社が廃止され、証明を得られない | 請求は可能です。会社が廃止された事情を管轄の労働基準監督署へ説明し、提出方法を確認します。 |
| 証明なしで請求した | 証明がないことだけで支給が確定するわけではありません。労働基準監督署が請求事実を確認します。 |
休業の請求に使う様式を確認する
| 災害の種類 | 休業(補償)等給付の請求書 |
|---|---|
| 仕事が原因の業務災害 | 休業補償給付支給請求書(様式第8号) |
| 複数の勤務先の負荷を総合して判断する複数業務要因災害 | 複数事業労働者休業給付支給請求書(様式第8号) |
| 通勤が原因の通勤災害 | 休業給付支給請求書(様式第16号の6) |
様式第8号と第16号の6には、本人が記入する欄のほか、事業主と診療担当者が証明する欄があります。事業主証明を受けられない場合でも、会社名を偽って記入したり、本人が会社の証明欄へ記名したりしないでください。未証明欄の扱いは管轄の労働基準監督署の指示に従います。
会社が証明しないときの請求手順
会社へ、様式第8号または第16号の6の事業主証明を依頼します。口頭だけでなく、依頼日、依頼先、対象の請求期間、会社の回答が分かるメールや書面を残しておくと、労働基準監督署へ事情を説明しやすくなります。
仕事が原因なら様式第8号、通勤が原因なら様式第16号の6を選び、氏名、災害発生日、休業期間、賃金を受けなかった日数、振込口座など本人が記入する欄を作成します。災害の種類が分からない場合は、この段階で労働基準監督署へ確認してください。
診療担当者へ、傷病名、療養期間、療養のため働けなかったと認められる期間など、請求書の診療担当者証明を依頼します。事業主証明を得られないことと、診療担当者証明の要否は別の問題です。
勤務している、または災害時に勤務していた事業所の所在地を管轄する労働基準監督署へ連絡します。「休業(補償)等給付を請求したいが、会社が事業主証明を拒否している」と伝え、未証明の請求書の出し方、事情説明の方法、追加資料を確認します。
労働基準監督署から案内された方法で、請求書と求められた資料を窓口または郵送で提出します。証明を得られない事情について、全国共通の固定様式があると決めつけず、管轄署が指定する方法に従ってください。
休業(補償)等給付は、賃金を受けなかった日ごとに翌日から2年で時効になります。会社の回答待ちだけで請求準備を止めず、古い休業日がある場合は期限を管轄署へ伝えてください。
労働基準監督署へ相談するときに整理する内容
次の情報と手元の資料を、用意できる範囲で整理します。すべてが一律の必須添付書類という意味ではありません。
請求書で誰が何を証明するか
| 記入・証明する人 | 主な内容 |
|---|---|
| 請求人本人 | 氏名、住所、災害発生日、休業期間、賃金を受けなかった日数、振込口座など |
| 事業主 | 災害発生状況、平均賃金、休業期間、賃金の支払い状況など |
| 診療担当者 | 傷病名、療養期間、療養のため働けなかったと認められる期間など |
会社が証明を拒否したときは、本人が事業主の証明内容を代わりに作成するのではありません。本人欄と診療担当者欄を準備し、事業主欄をどの状態で提出するか、事情説明と代替資料をどうするかを労働基準監督署へ確認します。
証明拒否のときに避けること
手続きを止めたり、事実と異なる書類を作ったりしないよう注意します。
- 会社の「労災ではない」という回答だけで請求を断念する
- 事業主証明欄を本人や第三者が会社に代わって記入・押印する
- 管轄署へ確認せず、インターネット上の任意様式を必須書類だと決めつける
- 会社の返答を待ち続け、休業日ごとの2年の時効を過ぎる
- 被災労働者本人の給付請求と、事業主が行う労働者死傷病報告を同じ手続きだと考える
よくある質問
会社が「労災ではない」と言っています。休業補償給付は請求できますか?
請求できます。労災に当たるかは会社ではなく労働基準監督署長が判断します。会社が事業主証明を拒否していることを管轄の労働基準監督署へ伝え、提出方法を確認してください。
事業主証明なしで出せば、必ず休業補償給付が支給されますか?
必ず支給されるわけではありません。事業主証明がないからといって請求書を絶対に受け付けないものではありませんが、労働基準監督署が業務災害・通勤災害の事実や支給要件を確認して支給・不支給を決定します。
「事業主証明拒否の申立書」という決まった様式はありますか?
厚生労働省の公式Q&Aは、事業主証明が得られない場合に労働基準監督署へ相談するよう案内しています。事情説明や追加資料の形式を自己判断で固定せず、管轄署へ必要な内容と提出方法を確認してください。
会社が廃止されて連絡できない場合はどうしますか?
請求は可能です。会社が廃止され、事業主証明を得られない事情を管轄の労働基準監督署へ説明し、提出方法と必要な確認資料を相談してください。
退職後も毎回、前の会社の証明が必要ですか?
厚生労働省の請求手続パンフレットでは、離職後の第2回目以降の請求は事業主証明が不要とされています。ただし、その請求で対象にする労働不能期間の全部または一部が離職前にかかる場合は証明が必要です。個別の請求期間を管轄署へ伝えて確認してください。
会社の証明待ちで時間がかかっています。請求期限はいつですか?
休業(補償)等給付の請求権は、療養のため働けず賃金を受けなかった日ごとに発生し、それぞれの翌日から2年で時効になります。古い休業日から期限が進むため、早めに管轄の労働基準監督署へ相談してください。
公式情報と確認日
この記事は、厚生労働省の労災保険Q&A、休業(補償)等給付の請求手続パンフレット、主要様式案内、茨城労働局Q&Aを2026年8月11日に確認して作成しています。個別の業務起因性、未証明欄の扱い、追加資料、提出方法は管轄の労働基準監督署へ確認してください。
次にすること
まず会社への証明依頼の経過と、事故・休業・賃金・受診に関する情報を整理してください。次に、業務災害なら様式第8号、通勤災害なら様式第16号の6を用意します。そのうえで事業所所在地を管轄する労働基準監督署へ連絡し、「会社が事業主証明を拒否している」と伝えて、提出方法と追加資料を確認します。
労災の休業(補償)等給付の申請方法を確認する休業4日目からの支給、支給額、待期3日、通常の必要書類は、基礎記事で確認できます。労働者死傷病報告の期限と提出方法を確認する事業主が行う労働者死傷病報告は、被災労働者本人が行う労災保険給付の請求とは別手続きです。