結論:10日過ぎても速やかに提出すれば受理されます

労働保険の保険関係成立届は、保険関係が成立した日の翌日から10日以内が期限ですが、過ぎてしまっても提出自体は可能です。所轄の労働基準監督署(雇用保険に係る分は公共職業安定所〈ハローワーク〉)へ成立届を速やかに提出し、あわせて成立日の翌日から50日以内に概算保険料申告書の提出と概算保険料の納付を行ってください。放置すると行政庁の職権による認定決定で遡って保険料と追徴金10%が徴収されるほか、労災発生時には給付費の40%または100%が事業主から徴収されるリスクがあります。2026年8月30日時点の公式情報で整理します。

前提を確認:いつが「成立日」かと一元・二元

保険関係は、労働者を1人でも雇用した時点で法律上当然に成立します。成立日は「事業を開始し労働者を雇用した日」です。翌日から数えて10日が成立届の期限、50日が概算保険料申告・納付の期限となります。事業の種類により手続きが分かれます。

一元・二元別の提出先(成立届と概算申告)
区分保険関係成立届(10日以内)概算保険料申告書(50日以内)
一元適用事業(一般の事業)所轄の労働基準監督署労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行のいずれか
二元適用事業(農林漁業・建設業等) 労災分所轄の労働基準監督署労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行のいずれか
二元適用事業 雇用分所轄の公共職業安定所都道府県労働局・日本銀行のいずれか

一元か二元かは事業の実態で決まります。迷う場合は事前に労働基準監督署へ確認すると、提出先の誤りを防げます。

なぜ遅れやすいか:よくある誤解

遅延の典型パターン

  • 事業開始日と「初めて労働者を雇った日」を混同し、雇用日を起算点にしていない
  • 労働保険=雇用保険だけと思い込み、労災分の届出を失念している
  • 提出先を「ハローワークだけ」「労基署だけ」と誤解し、片方だけ提出している
  • 概算保険料は年度末に精算すればよいと誤解し、50日以内の申告・納付を忘れている

放置するとどうなるか:公式のペナルティ

厚生労働省は、指導を受けても成立手続を行わない事業主に対して、職権で成立手続と労働保険料の認定決定を行い、遡って保険料と追徴金を徴収するとしています。さらに労災事故が発生すると追加の費用徴収があります。

主なペナルティの概要(2026年8月30日時点)
項目内容
遡及徴収と追徴金最大2年間遡った労働保険料+追徴金10%を徴収
労災費用徴収(故意)指導を受けたのに手続せず労災発生時、労災給付額の100%を事業主から徴収
労災費用徴収(重大な過失)1年以上手続せず労災発生時、労災給付額の40%を事業主から徴収
適用例賃金日額1万円の死亡事故で遺族補償一時金1,000万円の場合、故意なら1,000万円、重大な過失なら400万円の徴収(保険料・追徴金は別途)

遅れたときの回復ステップ:この順で提出します

成立日を確定する。雇用契約書・出勤簿・賃金台帳で、初めて労働者を雇用した日を確認し、翌日から10日・50日を数え直します。

一元・二元を判定する。建設業・農林漁業など二元適用に該当するか、一般事業として一元かを整理します。不明なら労働基準監督署へ電話で確認します。

保険関係成立届(様式第1号)を提出する。一元は所轄の労働基準監督署へ、二元は労災分を労基署・雇用分をハローワークへ提出します。遅延理由を聞かれたら事実を簡潔に伝えます。窓口持参、郵送、e-Gov電子申請のいずれも可能です。

概算保険料申告書(様式第6号)を50日以内に提出し、概算保険料を納付する。提出先は労働基準監督署・都道府県労働局・日本銀行(代理店・歳入代理店を含む)のいずれかです。申告書に付属の納付書で全額を納めます。概算保険料が40万円以上で9月30日までに成立した事業は、3回分割の延納(第2期11月14日・第3期2月14日)も検討できます。

雇用保険の手続きをハローワークで進める。雇用保険適用事業所設置届は設置日の翌日から10日以内、被保険者資格取得届は資格取得日の翌月10日までにハローワークへ提出します。成立届と同時またはその後に行います。

提出方法と持ち物:窓口・郵送・電子申請

提出方法の実務

  • 窓口:管轄の労働基準監督署またはハローワークへ持参。開庁時間内に提出し、控えに受付印をもらいます。
  • 郵送:所轄署・所へ郵送。消印日が提出日となるため、期限内の消印を確保し、返信用封筒と控えを同封します。
  • 電子申請:e-Govで「労働保険 保険関係成立届」「概算保険料申告書」を検索して申請。電子証明書やGビズIDが必要です。
  • 納付:日本銀行本支店・代理店、歳入代理店(銀行・信用金庫・郵便局)でも納付できます。

兵庫労働局の案内では、成立届は10日以内、概算申告は50日以内と明記され、様式第1号・第6号の記入例も公開されています。記入欄は事業所所在地・名称・事業の種類・労働者数・賃金見込額などです。事前に記入例で確認すると差し戻しを防げます。

よくある質問

10日過ぎたら罰則としてすぐに罰金がありますか?

期限を過ぎただけで直ちに罰金が科されるわけではありません。ただし、行政の指導後も手続を怠ると、職権による認定決定で最大2年分の保険料と追徴金10%が徴収され、労災時は別途40%または100%の費用徴収が加算されます。遅延に気づいた時点で速やかに提出すれば、これらの拡大を抑えられます。

電子申請はできますか?

e-Govの電子申請で提出できます。厚生労働省の手続ページから検索できます。初めての場合はGビズIDや電子証明書の準備に時間がかかるため、急ぐときは窓口または郵送を併用してください。

賃金総額の見込額はどう計算しますか?

成立日からその年度末(3月31日)までに全労働者に支払う賃金の見込み総額に、労災保険率と雇用保険率を乗じて算出します。兵庫労働局の解説では、成立届と概算申告は同時または成立届の後に行うとされています。賃金台帳や労働条件通知書で1人あたりの月給と雇用期間から見積もります。

まとめ:今日やることチェックリスト

今日やること

出典:厚生労働省「労働保険の成立手続」「成立手続を怠っていた場合は」、兵庫労働局「労働者を雇用したとき(労働保険)」(いずれも2026年8月30日確認)。