調書方式の住宅ローン控除で適用申請書を出し忘れた場合でも、控除自体が直ちに無効になるわけではありません。当年分はマイナポータルから年末残高情報が届かないため、金融機関から従来の残高証明書や返済予定表を取り寄せて年末調整または確定申告で対応し、翌年分に向けて速やかに適用申請書を提出します。年末調整に間に合わなければ確定申告(還付申告は5年以内)で取り戻せます。

手続きの概要:証明書方式と調書方式の違い

住宅ローン控除は、年末の借入残高に応じて所得税等から控除する制度です。令和4年度税制改正により、従来の「証明書方式」から「調書方式」へ移行が進んでいます。金融機関が税務署へ年末残高調書を提出し、国税庁からマイナポータル連携で年末残高情報が届くのが調書方式です。経過措置により全金融機関が順次移行しており、令和7年4月以降資金実行分から対応する金融機関が増えています。

証明書方式と調書方式の比較
項目証明書方式(従来)調書方式(改正後)
残高の証明方法金融機関が交付する年末残高証明書を納税者が提出金融機関が税務署へ年末残高調書を提出、国税庁からマイナポータルで通知
納税者の事前手続き特になし(証明書を受け取る)金融機関へ「住宅ローン控除の適用申請書」を提出(マイナンバーまたはe-Tax利用者識別番号)
年末調整・確定申告証明書を勤務先・税務署へ添付マイナポータル連携で自動入力、または手元の書類で残高を確認して入力
適用開始居住年が令和5年1月以後でも金融機関が未移行なら従来どおり金融機関が移行済みかつ適用申請書を提出した年分から

対象者:適用申請書が必要になる方

次のすべてに当てはまる方が対象です。一つでも当てはまらない場合は、従来どおり年末残高証明書での手続きになります。

対象者の条件

  • 居住開始が令和5年1月1日以後である
  • 借入先金融機関が調書方式へ移行済みである(国税庁の一覧で確認できます)
  • その金融機関から住宅ローン控除の適用申請書の提出を求められている

出し忘れに気づくタイミングと対処の分岐

気づいた時期によって、取るべき行動が異なります。年末調整前か後かで、勤務先へ出す書類と申告方法が変わります。

気づいた時期別の対処
気づいた時期当年分の対応翌年以降の対応
年末調整の書類提出前(10〜11月頃)すぐに金融機関へ適用申請書を提出。間に合えば当年も調書方式で通知される場合がありますが、間に合わなければ証明書・返済予定表で年末調整提出済みなら翌年は調書方式で自動連携
年末調整の締切直前・直後(12〜1月)金融機関に残高証明書(適宜様式)の発行を依頼し、勤務先に提出。間に合わなければ確定申告へ切替適用申請書は速やかに提出し翌年分に備える
確定申告期間中(翌年1〜3月)返済予定表等で残高を確認して確定申告書を作成。マイナポータル連携が使えない年分は手入力します同上、翌年はマイナポータル連携の事前準備(e-Taxからの情報取得希望)を済ませる
年末調整後に適用申請書だけ出し忘れに気づいた当年分は影響しませんが、翌年分から調書方式が使えるよう速やかに提出します金融機関が定める期限(例:6月頃)までに提出

手順1:借入先が調書方式に対応しているか確認する

まず、国税庁が公表する「調書方式に対応した金融機関の一覧」で、ご自身の借入先が調書方式へ移行済みか確認します。掲載は同意した金融機関のみですが、一覧にない場合は金融機関のコールセンターで移行状況を確認します。移行していない金融機関では、従来どおり年末残高証明書が送付されるため、適用申請書は不要です。

確認先

  • 国税庁「調書方式に対応した金融機関の一覧」
  • 借入先金融機関の住宅ローン窓口・コールセンター
  • 住宅金融支援機構の場合は「住・My Note」のお知らせ(令和7年4月以後実行分が対象)

手順2:金融機関へ適用申請書を速やかに提出する

調書方式に対応した金融機関では、適用申請書の提出が必須です。提出しないと、税務署から年末残高情報が通知されず、控除の適用ができません。様式は各金融機関が定めており、住宅ローン契約時の書類に含めて提出する金融機関もあります。

適用申請書の提出方法

  • 書面:金融機関所定の様式に氏名・生年月日・住所・マイナンバー(またはe-Tax利用者識別番号)を記載して窓口または郵送で提出
  • 電子:金融機関が電子受付に対応している場合は、金融機関のアプリやウェブサイトから提出
  • 契約書類内:新規借入れ時に契約書類へ申請事項を含める方法で提出(金融機関所定)
  • 提出後は本人確認(マイナンバーカード等)が求められる場合があります。e-Tax利用者識別番号を求められた場合は、マイナンバーの代わりに利用者識別番号を記載します

手順3:当該年分の年末残高をどう証明するか

適用申請書を出し忘れた年分については、調書方式で年末残高情報が届きません。国税庁のよくある質問(問16)では、適用申請書の提出があった年分以後の年分について調書が提出され、提出前の年分は返済予定表等の手元の書類で残高を確認して申告できると説明されています。金融機関へは適宜の様式で残高を照会でき、従来の年末残高証明書の様式で発行してもらうことも可能です。

年末調整に間に合わない場合・確定申告への切替

年末調整で住宅ローン控除の書類を出し忘れたり、調書方式の情報が間に合わなかったりしても、確定申告で取り戻せます。年末調整はその年最後の給与支払日の前日までに書類を提出するのが原則ですが、間に合わなければ翌年の確定申告期間(原則2月16日〜3月15日)に申告します。還付申告は5年以内であれば提出可能です。

確定申告へ切り替える場合の流れ

  1. 勤務先へ年末調整の再計算が可能か確認(可能なら差し替え、不可なら確定申告へ)
  2. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」で住宅借入金等特別控除の欄に年末残高を入力(マイナポータル連携が使えない年分は手入力)
  3. 必要に応じて金融機関発行の残高証明書(適宜様式)を申告書に添付または提示
  4. e-Taxまたは税務署窓口・郵送で提出し、還付を受ける

金融機関から残高証明を取り寄せる方法

調書方式の適用申請書を出し忘れた年分でも、金融機関は従来の様式で残高を証明できます。問16では、適宜の様式で差し支えなく、従来の年末残高証明書の様式を用いてもよい(マイナンバー記載不要)とされています。次の方法で依頼します。

依頼方法

  • コールセンターまたは住宅ローン窓口へ「当該年分の年末残高証明書(適宜様式)の発行」を依頼する
  • 依頼時に「調書方式の適用申請書を出し忘れたため、当年分は適宜様式での証明を希望」と伝える
  • 発行された証明書の金額と手元の返済予定表の年末残高が一致するか確認する
  • 発行に時間がかかる場合は、手元の返済予定表で一旦申告し、後日正しい金額で訂正申告が必要か税務署へ相談する

注意点・よくある失敗

注意点

  • 適用申請書を提出しないと、調書方式では年末残高情報が届かず控除を受けられません(問3)
  • 適用申請書の提出期限は金融機関が定めます。例として6月頃までの金融機関が多く、期限を過ぎると当年は調書方式の対象外になります
  • 翌年10月31日が金融機関の調書提出期限ですが、繰上返済や延滞で残高が変動しても金融機関側での修正は不要で、納税者が正しい残高で申告します(問13)
  • 居住開始が令和5年以後の方でも、金融機関が未移行なら従来どおり証明書が必要です。移行済みか必ず確認します
  • マイナンバーを記載する金融機関と、e-Tax利用者識別番号を記載する金融機関があります。指示に従い正しい番号を記載します(問5)

よくある質問

適用申請書を出し忘れたら、その年の住宅ローン控除は受けられませんか?

いいえ、直ちに無効にはなりません。当年分はマイナポータルからの年末残高情報が届かないため、手元の返済予定表や金融機関から取り寄せる残高証明書(適宜様式)で年末残高を確認して、年末調整または確定申告で対応します。翌年分は速やかに適用申請書を提出すれば、翌年からは調書方式で連携できます。

適用申請書の提出期限はいつですか?過ぎたらどうなりますか?

期限は借入先金融機関が定めます。多くの金融機関で6月頃までと案内されています。期限を過ぎると当年分は調書方式の対象外となり、当年分の年末残高情報はマイナポータルに通知されません。当年は証明書方式(返済予定表や適宜様式の証明書)で申告し、翌年分に向けて改めて提出します。

年末調整に間に合わなかったら、どうすれば控除を取り戻せますか?

確定申告で取り戻せます。年末調整で出し忘れた場合でも、翌年の確定申告期間に申告すれば控除が適用されます。還付申告は5年以内であれば提出可能です。確定申告書等作成コーナーで年末残高を手入力し、必要に応じて金融機関の残高証明を添付します。

マイナンバーとe-Tax利用者識別番号のどちらを書けばよいですか?

金融機関の指示に従います。原則はマイナンバーですが、システム準備が間に合わない金融機関では「併用方式」としてe-Tax利用者識別番号を求められることがあります。金融機関の一覧や案内で確認し、お持ちでない場合はe-Taxホームページ「ご利用の流れ」から取得します。

公式情報と次の行動

調書方式の手続きは金融機関ごとに移行時期と適用申請書の様式が異なります。まずは国税庁の「住宅ローン控除の適用に係る手続(調書方式)について」と「よくある質問」で概要と問3・問14・問16を確認し、ご自身の金融機関が調書方式に対応しているかを一覧または窓口で確認してください。出し忘れに気づいたら、速やかに金融機関へ適用申請書を提出し、当年分は残高証明書または返済予定表で年末調整・確定申告を進めます。個別の判断に迷うときは、金融機関の住宅ローン窓口と所轄税務署へご相談ください。