結論として、住宅ローンを借換えしても一定の要件を満たせば控除は継続でき、年末調整で借換え前後の2枚の年末残高証明書を合算して申告します。令和4年度改正の調書方式に対応した金融機関では、事前に「住宅ローン控除の適用申請書」を金融機関へ提出し、マイナポータル連携で年末残高情報を取得する方法もあります。控除期間は借換えで延長されません。

症状の確認:なぜ2枚届くのか

借換えをした年に、借換え前の金融機関と借換え後の金融機関のそれぞれから年末残高証明書が発行されるため、10月〜11月頃に2枚の証明書が届きます。2枚の合計がその年の年末残高の対象額になるとは限らず、国税庁の定める計算式で控除対象額を算出します。

2枚届く典型例

  • 1枚目:借換え前の金融機関からの証明書(1月〜借換え月までの残高)
  • 2枚目:借換え後の金融機関からの証明書(借換え月〜12月31日の残高)
  • 調書方式対応金融機関の場合は、証明書ではなくマイナポータル上の年末残高情報として表示されることがあります

借換え後も控除を継続できる2つの要件

国税庁のタックスアンサーNo.1233では、借換えによる新しい住宅ローンが控除の対象となるには次の2つをすべて満たす必要があります。

控除継続の要件(令和7年4月1日現在)

  1. 新しい住宅ローン等が当初の住宅ローン等の返済のためのものであることが明らかであること
  2. 新しい住宅ローン等が10年以上の償還期間であることなど、住宅借入金等特別控除の対象となる要件に当てはまること(合計所得2,000万円以下、自己の居住用住宅であること等)

2枚の証明書の合算計算:控除対象となる年末残高

借換え後の控除対象額は、借換え直前の残高と新たな借入金額の大小で計算が分かれます。国税庁の式をそのまま整理します。

借換え後の年末残高の計算式
記号意味
A借換え直前における当初の住宅ローン等の残高
B借換えによる新たな住宅ローン等の借入金額(当初金額)
C借換えによる新たな住宅ローン等の年末残高(12月31日残高)
場合分け
条件控除対象となる年末残高
A ≧ B の場合対象額 = C(新たなローンの年末残高がそのまま対象)
A < B の場合対象額 = C × A ÷ B(新たなローンの年末残高に当初残高の割合を掛ける)

例えば、当初残高Aが2,000万円、新たな借入金額Bが2,500万円(増額借換え)、年末残高Cが2,400万円の場合、A<Bなので対象額は2,400万円×2,000万円÷2,500万円=1,920万円となります。増額部分は控除の対象外です。

証明書方式と調書方式の使い分け

令和4年度税制改正で、従来の「証明書方式」から「調書方式」へ移行が進められています。どちらの方式になるかは借入先の金融機関が対応しているかで決まります。

方式の違い
方式金融機関の対応年末調整での提出物
証明書方式(従来)調書方式未対応の金融機関金融機関から交付された年末残高証明書(紙)を勤務先へ提出
調書方式調書方式対応の金融機関(一覧は国税庁サイトで公開)金融機関が税務署へ提出した年末残高等調書の情報を、マイナポータル連携で取得して申告(事前に適用申請書の提出が必要)

経過措置により、対応が困難な金融機関では引き続き証明書方式が利用できます。調書方式の場合でも、証明書方式の金融機関との借換えで2枚が混在する(1枚は証明書、1枚は調書情報)ことがあります。

調書方式で必要な事前準備

国税庁の「調書方式に対応した金融機関の一覧」で、借入先が調書方式対応か確認します。

対応金融機関の場合、金融機関の様式による「住宅ローン控除の適用申請書」にマイナンバーまたはe-Taxの利用者識別番号を記載して金融機関へ提出します。居住を開始した年内に提出するのが原則です。

確定申告前または年末調整前に、マイナポータル連携で年末残高等情報を取得します。e-Taxからの情報取得を希望する事前設定が必要です。

年末調整での具体的な提出手順(借換え・2枚の場合)

税務署から送付された「住宅借入金等特別控除申告書」(2年目以降分がまとめて送付)を用意します。初年度は確定申告が必要で、年末調整では手続きできません。

2枚の年末残高証明書(または証明書1枚+調書情報)を合算計算した対象額を、申告書の「年末残高」欄に記入します。A<Bの場合は上記の按分計算を行います。

申告書と証明書(または調書情報)を勤務先へ提出します。勤務先の提出期限(通常12月上旬〜中旬)に間に合わない場合は、確定申告(還付申告)で5年以内に申告すれば控除を受けられます。

注意点・よくある失敗

注意点

  • 借換えで返済期間を10年未満にすると控除が打ち切られます。借換え契約時に返済年数を必ず確認します。
  • 増額借換えで借入金額が当初の残高を上回った場合、超過部分は控除対象になりません(按分計算)。
  • 調書方式では事前の適用申請書の提出を忘れると、マイナポータルで年末残高情報を取得できません。居住年内に手続きします。
  • 2枚の証明書を単純に合計して申告すると過大申告になります。AとBの大小で計算式が変わる点を間違えやすいです。
  • 借換え年に退職や転職で年末調整の機会がない場合は、確定申告で手続きします。

よくある質問

借換えで2枚の証明書が届きました。2枚とも勤務先へ提出しますか?

はい。借換え前と借換え後の2枚とも提出が原則です。ただし、調書方式対応金融機関の分は紙の証明書ではなくマイナポータル上の年末残高情報として提出します。A<Bの場合は按分計算した対象額を申告書に記入し、2枚の証明書を添付します。

借換え後の控除期間は延長されますか?

いいえ。控除を受けられる年数は居住を開始した年から一定期間(新築等の場合は原則13年など、入居年により異なります)で、借換えによって延長されることはありません。国税庁No.1233で明記されています。

調書方式か証明書方式か分かりません。

借入先の金融機関が国税庁の「調書方式に対応した金融機関の一覧」に掲載されているかで確認できます。掲載されている場合は調書方式で、事前に適用申請書の提出とマイナポータル連携が必要です。掲載されていない場合は従来どおり証明書方式で、金融機関から交付された年末残高証明書を勤務先へ提出します。

次の手続き・関連情報

住宅ローン控除の初年度は確定申告が必須で、2年目以降は年末調整で手続きします。生命保険料控除や地震保険料控除でも電子データ(XML・マイナポータル連携)での提出が可能です。年末調整で控除し忘れた分は確定申告(還付申告)で5年以内に取り戻せます。