退職後の給与所得の源泉徴収票は、原則として退職の日から1か月以内に交付することが事業者に義務づけられています。届かない場合は、まず送付先住所と電子交付の有無を確認し、前職へ事実ベースで再発行を依頼します。交付期限を過ぎても解消しないときは、納税地を所轄する税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」をe-Tax・郵送・持参のいずれかで提出できます。

対象となる源泉徴収票と交付期限を整理します

この記事で扱うのは、雇用契約に基づく「給与所得の源泉徴収票」です。退職金にかかる「退職所得の源泉徴収票」とは別の書類で、交付期限や手続きが異なります。混同しないように、退職時に受け取った書類の名称を確認します。国税庁のタックスアンサーNo.7411では、給与所得の源泉徴収票は、提出範囲にかかわらずすべての受給者に交付しなければならず、中途退職の場合は退職の日以後1か月以内、その他の場合はその年翌年の1月31日までとされています。全国共通の原則で、2026年8月31日時点の公式情報で確認しています。

給与所得と退職所得の源泉徴収票の違いと交付期限
項目給与所得の源泉徴収票退職所得の源泉徴収票
対象給与・賞与(雇用契約に基づく支払)退職手当等(退職金)
交付期限中途退職:退職後1か月以内/継続勤務:翌年1月31日まで退職手当等の支払確定後に交付(原則1か月以内)
交付義務者給与等の支払者(前職の会社等)退職手当等の支払者
年末調整との関係転職先の年末調整で前職分を合算するために必要確定申告や年末調整で退職所得の申告に使用

届かないときに多い5つの原因

届かないときに多い5つの原因

  • 送付先住所の誤り・引越し後の住所変更が伝わっていない(住民票の住所と送付先は連動しません)
  • 電子交付に気づいていない(メール通知や社内ポータルの通知を見落としている)
  • 会社側の事務遅延・年末調整前の退職で作成タイミングが年度末にずれている
  • 「退職所得の源泉徴収票」と混同し、給与所得の分だけ届いていないと誤解している
  • 郵送中の紛失・家族が受け取っている・保管場所を失念している

最初に確認したいこと(送付先と電子交付の見落とし)

最初に確認するチェックリスト

送付先は、退職時に会社へ登録した住所が使われます。住民票を移しても会社への届出がなければ反映されません。引越しがあった場合は、現住所を会社へ伝え直すことが必要です。電子交付の場合は、会社が事前に電磁的方法の種類・内容を示し、書面または電磁的方法で承諾を得ていることが前提です。承諾がないまま電子交付のみにすることはできません(国税庁 電子交付Q&A)。

会社へ再発行を依頼する方法(事実ベースで記録を残します)

給与所得の源泉徴収票の再発行は、支払者である前職へ依頼します。国税庁の「源泉徴収票不交付の届出」は、再発行ではなく交付されなかった場合の税務署への申出で、既に交付されたものの再発行は対象外です。まずは会社への依頼が先です。

人事・労務・給与担当の連絡先を確認します。退職時の書類、就業規則、給与明細、社内ポータル、または代表電話から担当部署へつなぎます。

事実ベースで依頼します。「退職日から1か月を経過しましたが、令和○年分 給与所得の源泉徴収票が未着です」と、退職日・氏名・社員番号・退職時の住所・現送付先・連絡先を伝えます。口頭だけでなくメールや書面で記録を残します。

電子交付の有無と再送方法を確認します。電子交付の場合は、閲覧URL・ログイン方法・パスワード再設定の手順を、書面の場合は再送の発送予定日と送付先を確認します。

依頼文の例(メール・書面で使えます)

  • 件名:給与所得の源泉徴収票の再交付のお願い(退職日○年○月○日 ○○ ○○)
  • 本文:○○株式会社 人事労務ご担当者様。○年○月○日に退職した○○(社員番号○)です。令和○年分の給与所得の源泉徴収票が退職後1か月を経過しても未着のため、再交付をお願いいたします。送付先は〒○○○-○○○○ ○○県○○市○○、連絡先は○○○-○○○○-○○○○です。電子交付の場合は閲覧方法をご教示ください。

会社が対応しない、または連絡がつかない場合でも、すぐに不交付の届出を出す前に、交付期限(退職後1か月)を経過しているか、依頼した記録があるかを確認します。これらは後の税務署手続きで添付・説明に使えます。

電子交付だったと分かった場合の追加対応

電子交付は、支払者が受給者に電磁的方法の種類・内容を示し、承諾を得ることが必要です。承諾は書面または電磁的方法で取得でき、「支払者が定める期限までに回答がないときは承諾したものとみなす」旨を通知している場合は、一定期間の回答期間が必要です。サーバ保存して社内LANで閲覧させる場合は、閲覧可能になった旨の通知が必要です。詳細は国税庁のQ&A(問5〜問10)で確認できます。

電子交付で確認するポイント

  • 事前に承諾を求める通知が来ていたか(メール・書面・社内掲示)
  • 承諾の回答期限はいつまでだったか
  • 閲覧用URL・ID・パスワードの通知が別メールや書面で届いていないか
  • 印刷(書面出力)が可能か(プリンターがなくても出力可能な措置があれば要件を満たします)
  • 書面での交付を希望する場合は、会社へ書面交付を請求できます

それでも届かないとき:税務署への「源泉徴収票不交付の届出」

交付期限を過ぎても支払者から交付されず、依頼しても解消しない場合は、納税地等を所轄する税務署へ「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できます。これは支払者に指導を行うための申出で、源泉徴収票自体を税務署が発行・再発行する手続きではありません。既に交付されたものの再発行は対象外です。提出時期は、交付期限を経過後、随時提出できます(中途退職は退職後1か月経過後)。手続根拠は所得税法226条で、2026年8月31日時点の様式は令和8年8月に変更されています。

源泉徴収票不交付の届出の概要
項目内容
手続対象者源泉徴収票を交付されなかった受給者(退職者本人)
提出時期交付期限経過後、随時(退職後1か月経過後)
提出先納税地等を所轄する税務署長(持参・送付・e-Tax)
提出方法e-Taxソフトで作成・送信/書面を税務署へ持参または送付(時間外収受箱への投函も可)
手数料無料
受付時間e-Taxは利用可能時間内/税務署窓口は8時30分〜17時(土日祝は閉庁、送付・収受箱は可)

添付すると審査が進みやすい書類

  • 給与支払明細書の写し(保存している場合)
  • 勤務先へ交付を求めたことが分かる書類(メールの送信履歴、内容証明・書留の控え、社内チャット履歴等)
  • 本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証等、税務署で求められた場合)
  • 退職日や雇用関係が分かる書類(雇用契約書・退職証明書等、必要に応じて)

届出書には「源泉徴収票の不交付を国税当局に申し入れたことにつき、事業主に氏名を告知して差し支えありませんか」欄があります。いずれかにチェックを入れます。外国人の方は、裏面の居住に関する事項も記載し、居住期間を明らかにする書類があれば写しを添付します。

転職先・年末調整・確定申告への影響と代替

転職先で年末調整を受ける場合、前職の給与所得の源泉徴収票が必要です。前職分を含めて合算して年末調整を行うため、前職分が不明だと年末調整が完了しません。年末調整に間に合わない場合は、翌年の確定申告で前職・現職の給与を合算して申告します。給与明細や給与支払明細書は、源泉徴収票の代用にはなりません。

年末調整に間に合わないときの動き方

  • 前職の源泉徴収票が届くまで転職先へ事情を伝え、年末調整の可否を確認する
  • 間に合わない場合は、確定申告で年末調整未済分を申告する(確定申告期間は翌年2月16日〜3月15日が原則)
  • 確定申告では、源泉徴収票の金額を正確に転記します。金額が不明な場合は、前職へ金額確認を依頼するか、税務署へ相談します
  • 退職所得の源泉徴収票は、確定申告で退職所得を申告する際に別途必要になることがあります

よくある質問

退職後1か月を過ぎても届かない場合、いつまで待つべきですか

給与所得の源泉徴収票は、退職後1か月以内が交付期限です。期限を過ぎても届かない場合は、まず送付先と電子交付を確認し、前職へ再発行を依頼します。1週間程度待っても返答や発送がない場合は、依頼記録を残したうえで、税務署への不交付の届出を検討します。年末調整や確定申告の期限が近い場合は、早めに相談します。

電子交付に同意した覚えがないのに電子のみと言われました

電子交付は、事前に電磁的方法の種類・内容を示し、承諾を得ることが要件です。就業規則等に包括的に記載されている場合や、「期限までに回答がなければ承諾とみなす」通知が含まれていた場合もあります。まずは承諾を求める通知がいつ、どの方法で来ていたかを確認します。承諾の事実が確認できない、または書面での交付を希望する場合は、支払者へ書面交付を請求できます(請求があれば書面で交付しなければなりません)。

不交付の届出を出すと会社に知られますか

届出書には、事業主へ氏名を告知して差し支えないかを選択する欄があります。税務署から事業主へ指導・確認が行われる場合があり、その際に氏名の告知可否が参照されます。匿名での指導を希望するか、氏名告知を許容するかは、ご自身の状況で選択します。届出自体は無料で、納税地の税務署へe-Tax・郵送・持参で提出できます。

次の行動チェックリスト

退職後に源泉徴収票が届かないときの次の行動

当サイトの内容は参考情報です。具体的な手続きや個別の税務判断は、管轄の税務署または国税庁の電話相談窓口へご確認ください。様式や手続きは変更されることがあるため、提出前に最新の公式ページでご確認ください。