源泉徴収票を電子交付で受け取りたくない場合、事前の承諾がなければ会社は電子交付できません。同意していない、または令和5年改正の「みなし承諾」に心当たりがない場合は、書面での交付を請求すれば会社は書面で交付しなければなりません。請求はメールや書面など適宜の方法で可能です。

結論:同意がなければ電子交付はできず、紙を請求すれば書面で交付されます

所得税法上、給与所得の源泉徴収票などの電子交付(電磁的方法による提供)には、受給者の承諾が必要です。国税庁のQ&A(問2、問5)では、あらかじめ電磁的方法の種類と内容を示し、電磁的方法または書面で承諾を得ることが要件とされています。 令和5年度および令和6年度税制改正で導入された「みなし承諾」は例外的な簡略化ですが、事前に『支払者が定める期限までに回答がないときは承諾があったものとみなす』旨を通知し、その期限までに回答がなかった場合にのみ適用されます。みなし承諾が成立していても、受給者から書面での交付請求があれば、支払者は書面で交付しなければなりません(問1、問2)。 したがって、同意していないのに電子のみで交付された、紙で欲しいと伝えたのに拒否されたという場合は、改めて書面交付を請求できます。2026年8月25日時点の国税庁情報で確認しています。

電子交付の仕組みと承諾が必要な理由

電子交付が可能な書類は、給与所得の源泉徴収票・給与等の支払明細書をはじめ、オープン型証券投資信託の収益分配の支払調書、配当等の支払調書、特定口座年間取引報告書など10種類です(問1)。 電子交付を行うには次の要件を満たす必要があります(問2)。 ・受給者に対し、電磁的方法の種類と内容を事前に示し、承諾を得ること ・映像面への表示と書面への出力ができること ・受信者ファイルへの記録を通知すること(直接送信等を除く) ・請求があれば書面で交付すること 承諾の方法に法令上の定まった書式はありません。電子メールや社内システム上で『電子交付について承諾する旨、承諾日、氏名』などを入力する方法や、書面に記載する方法が例示されています(問5)。

令和5・6年改正「みなし承諾」とその条件

令和5年度および令和6年度税制改正により、次の書類については『みなし承諾』が認められました。支払者が『支払者が定める期限までに回答がないときは承諾があったものとみなす』旨をあらかじめ通知し、期限までに回答がなかった場合に承諾があったものとみなされます(問1、問7)。

みなし承諾の対象と紙での交付請求の可否
書類の種類みなし承諾の対象紙での交付請求
給与所得の源泉徴収票・給与等の支払明細書対象(令和5年改正)可能。請求があれば書面で交付
オープン型証券投資信託・配当等・上場株式配当等の支払通知書・特定口座年間取引報告書など対象(令和5・6年改正)可能。請求があれば書面で交付
退職所得の源泉徴収票・退職手当等の支払明細書、公的年金等の源泉徴収票・支払明細書対象外常に個別の承諾が必要。請求があれば書面で交付

同意していないのに電子交付にされたときの確認ポイント

次の3点を確認します。いずれかが欠けていれば、電子交付の要件を満たしていない可能性があります。

電子交付にされたときに確認すること

  • 事前に電磁的方法の種類と内容(例:社内システムでPDFを閲覧、メールで送信など)の説明があったか
  • 承諾の記録(承諾日・氏名・承諾方法)があるか。口頭のみ、または説明なしの配付は承諾になりません
  • みなし承諾を主張される場合、事前に『期限までに回答がなければ承諾とみなす』旨の通知が確実に行われたか、期限は十分だったか

全国共通の原則ですが、社内システムの仕様や通知の運用は会社により異なります。個別事情によって判断が異なるため、通知メールや社内ポータルのお知らせ履歴を確認します。

紙で交付してほしいときの具体的な請求手順

請求方法を確認する

源泉徴収票等の書面交付の請求方法は法令で定められていません。メール、社内システムの申請フォーム、書面など適宜の方法で請求できます(問14)。会社が指定する請求先(人事労務担当、給与担当など)があればそれに従い、なければ直属の上司や人事窓口へ連絡します。

文例を使って書面交付を請求する

件名: 令和○年分 給与所得の源泉徴収票の書面交付のお願い ○○株式会社 人事労務部 御中 令和○年分 給与所得の源泉徴収票につきまして、電子交付ではなく書面での交付をお願いいたします。 所得税法第231条および関連通達に基づく請求です。 氏名:____ 社員番号:____ 対象年分:令和○年分(令和○年1月〜12月) 希望する交付方法:書面(紙)での交付 ご確認の上、交付方法と交付予定日をご連絡ください。 以上

一度電子交付を承諾した場合でも、書面交付への変更は可能です。電磁的方法または書面により『電子交付に代えて○年分以後の源泉徴収票から書面で受けたい』旨を申し出ます(問15)。申出以後の分から書面交付に切り替わります。

会社が応じない場合の対応を準備する

書面交付を請求したにもかかわらず会社が応じない場合、所轄税務署の相談窓口に相談できます。源泉徴収票は所得税法により交付が義務付けられており、交付を拒むことは法令違反となる可能性があります。 なお、源泉徴収票自体が全く交付されない場合は『源泉徴収票不交付の届出書』を税務署へ提出すると、税務署から会社へ交付を促す行政指導が行われます。電子交付と紙の交付方法の争いについても、まずは税務署へ実情を相談するのが確実です。記録として、請求した日時・方法・相手の回答を残しておきます。

会社が紙での交付を拒否したときの相談先

給与所得の源泉徴収票は、支払者が受給者に交付しなければならない法定書類です。電子交付について承諾を得ている場合でも、書面での交付請求があれば書面で交付しなければなりません(問1後段、問2後段)。 会社が『電子交付に一本化しているため紙は出せない』と拒否する場合、法令上の要件を満たしていません。次の窓口へ相談できます。 ・所轄税務署の所得税担当または相談窓口 ・国税庁の税務相談チャットボットや電話相談センター 相談時は、①電子交付の承諾の有無、②みなし承諾の通知の有無と期限、③書面交付を請求した事実と会社の回答、を整理して伝えます。個別事情によって判断が異なるため、最終的には管轄の税務署へご確認ください。

電子交付を一度承諾した後に紙に戻したいとき

受給者から事前に電子交付の承諾を得ている場合、毎回承諾を取り直す必要はありません(問6)。一方、一度承諾した後に『今後は書面で受け取りたい』と申し出た場合、その申出以後は電子交付できません。申出は電磁的方法または書面で行います。 例:『電子交付に代えて、令和8年分以後の給与所得の源泉徴収票から書面による交付を受けたいので届け出ます。』のように、対象年分や支払明細書の対象月を明確にして申し出ます(問15)。会社側で手続きが完了するまで電子交付が続く場合があるため、切替時期を確認します。

よくある質問

会社から『回答がなければ電子交付に同意したものとみなす』と通知が来ました。無視すると自動で電子交付になりますか?

支払者が事前にその旨を通知し、定めた期限までに回答がなかった場合には、みなし承諾として電子交付が可能になります(問7)。ただし、期限は法令で定めがなく十分な期間が必要とされ、通知自体がなければみなし承諾は成立しません。通知に心当たりがないか、社内メールやポータルのお知らせを確認し、不明な場合は人事担当へ承諾の有無と通知の事実を確認します。みなし承諾が成立していても、後から書面交付を請求すれば書面で交付してもらえます。

退職後に前職の源泉徴収票を紙で欲しいと言っても拒否されました。どうすればよいですか?

退職後でも書面交付の請求は可能です。まずは前職の人事労務担当へ、退職年月日と対象年分を明記して書面交付を請求します。連絡が取れない、または応じてもらえない場合は、納税地の所轄税務署へ相談します。源泉徴収票が全く交付されない場合は『源泉徴収票不交付の届出書』の制度があり、税務署から会社へ交付を促す対応が取られます。年末調整や確定申告に間に合わないときは、税務署へ申告方法も併せて相談します。

e-Taxやマイナポータルで源泉徴収票の内容を確認できますか?

勤務先がe-Tax等へ法定調書として提出する源泉徴収票の情報は、マイナポータルの『わたしの情報』などで一部確認できる場合がありますが、正式な源泉徴収票の交付に代わるものではありません。確定申告や住宅ローン審査、扶養手続きなどで原本が必要なときは、支払者から交付された書面または正規の電子交付データ(PDF等で書面出力可能なもの)が必要です。勤務先からの交付を優先して請求します。

まとめと次の行動

源泉徴収票の電子交付には原則として事前の承諾が必要です。令和5・6年改正の『みなし承諾』は事前通知と期限内の無回答が条件で、退職所得や公的年金等は対象外です。みなし承諾が成立していても、書面での交付を請求する権利は失われません。

紙での交付を求めるときのチェックリスト

個別事情によって判断が異なるため、手元の通知や就業規則、社内ポータルの案内を確認し、不明な点は管轄の税務署へご確認ください。