借金などの有無が不明で財産が残る可能性もある場合は、相続人全員で共同して、知った日から3か月以内に被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ限定承認の申述をします。得た財産の限度でのみ債務を負担する手続きです。費用は収入印紙800円分と連絡用郵便切手で、申述書・戸籍等・住民票除票等と遺産目録をそろえて提出します。2026年9月8日時点の裁判所公式情報で確認しています。

手続きの概要

限定承認は、相続によって得た財産の限度で被相続人の債務の負担を受け継ぐ選択です。裁判所の案内では、相続開始時の3つの選択肢が示されています。

3つの選択肢の位置づけ

  • 単純承認:権利も借金などの義務もすべて受け継ぐ方法です。
  • 相続放棄:権利も義務も一切受け継がない方法で、家庭裁判所への申述が必要です。
  • 限定承認:債務の程度が不明で財産が残る可能性もある場合に、得た財産の限度でのみ債務を負担する方法で、家庭裁判所への申述が必要です。

対象者

借金の有無や金額がはっきりせず、財産が残る可能性もあるため放棄までは決めきれない相続人が対象です。

対象の目安

  • 被相続人に借金や保証債務があるかもしれないが、預貯金や不動産など残る財産もありそうな相続人
  • 相続人全員で限定承認の方針に合意できる関係にある相続人
  • 3か月以内に調査しても判断材料がそろわないため、期間伸長の検討も含めて早めに動きたい相続人

期限と申述先・費用

申述期間と申述先、費用は全国共通の家庭裁判所手続きとして定められています。

期限・申述先・費用の要点
項目内容
申述期間自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内です。
申述人相続人全員が共同して行う必要があります。
申述先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。
費用収入印紙800円分と連絡用の郵便切手が必要です。郵便料は保管金として納付できる場合があります。

必要書類

申述書と標準的な添付書類をそろえます。同じ書類は1通で足ります。申述前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、申述後に追加提出することでも差し支えないと案内されています。

標準的な添付書類の例

  • 申述書:限定承認用の家事審判申述書と当事者目録、土地・建物・現金や預貯金などの遺産目録を用意します。書式と記入例は裁判所の申述書ページから取得できます。
  • 共通書類:被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本、被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人全員の戸籍謄本が基本です。死亡している子や代襲者がいる場合は、その方の出生から死亡までの戸籍謄本も必要です。
  • 第二順位(父母や祖父母等)の場合:先順位から提出済みのものを除き、死亡している直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本などを追加します。
  • 第三順位(兄弟姉妹やおいめい)の場合:被相続人の父母の出生から死亡までの戸籍謄本、直系尊属の死亡記載のある戸籍謄本、死亡している兄弟姉妹や代襲者の戸籍謄本などを追加します。

手順1:方針と全員合意を確認する

限定承認は相続人全員の共同申述が必要です。一人でも合意できない場合は成立しません。借金や保証債務の心当たり、財産の目星、相続放棄との向き不向きを整理し、全員で方針を確認します。

手順2:3か月の起算点と調査計画を確認する

起算点は自己のために相続の開始があったことを知ったときです。戸籍収集と財産調査に時間がかかる場合は、期間伸長の申立てが必要になることも見込んで、早めに家庭裁判所へ相談します。

手順3:戸籍等と遺産目録をそろえる

被相続人の出生から死亡までの戸籍、住民票除票または戸籍附票、申述人全員の戸籍などを集めます。並行して土地・建物・預貯金などの遺産目録を作成します。入手が間に合わない戸籍等は、申述後の追加提出が認められる場合があります。

手順4:申述書を作成する

裁判所の書式である家事審判申述書、当事者目録、遺産目録を用意し、記入例に沿って作成します。実際に申述を受けた家庭裁判所では、書面照会や事情聴取で追加確認される場合があります。裁判所からの照会や呼出しには必ず応じます。

手順5:最後の住所地の家庭裁判所へ提出する

被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ、収入印紙800円分と連絡用郵便切手とともに提出します。申述先が不明な場合は、裁判所の申立書提出先一覧で確認します。

相続放棄との違い

どちらも家庭裁判所への申述と3か月の期間は共通ですが、申述人と書類の範囲、費用の数え方が異なります。

限定承認と相続放棄の違い
項目限定承認相続放棄
申述人相続人全員の共同が必要です。相続人が単独でできます。未成年者等の代理や特別代理人の扱いがあります。
効果の要点得た財産の限度で債務を負担します。権利も義務も一切受け継ぎません。
費用の目安収入印紙800円分と連絡用郵便切手です。収入印紙800円分が申述人1人につき必要で、連絡用郵便切手も必要です。
書類の要点被相続人の出生から死亡までの戸籍一式と申述人全員の戸籍等が基本で、順位別に追加があります。申述人の戸籍等を中心に順位別に追加します。先行事件で提出済みの書類は不要な場合があります。

相続放棄の詳しい書類や未成年者の代理条件は、裁判所の相続放棄の案内で確認します。限定承認か放棄か迷う場合は、期間内に方針を決めることが重要です。

注意点・よくある失敗

限定承認でつまずきやすい点

  • 相続人の一部だけで申述してしまい、全員共同の要件を満たさないまま期限が迫ることがあります。
  • 戸籍を出生から死亡まで通しで集めきれず、順位別の追加書類の不足で手戻りになることがあります。
  • 3か月ぎりぎりまで調査を続けて期間伸長の相談が遅れることがあります。
  • 法定相続情報一覧図の写しで代用できるかを事前確認せずに進めてしまうことがあります。
  • 申述後の公告や弁済、登記や税務まで別手続きが必要になることを見落とすことがあります。

申述後にすることの目安

申述は家庭裁判所での手続きの入口です。受理後の財産管理や債権者対応、不動産の登記や相続税などの税務は別途手続きが必要になる場合があります。具体的な進め方は、家庭裁判所の案内に応じて対応し、登記は法務局、税務は税務署、全体の判断は専門家への相談も検討してください。当サイトの内容は参考情報です。具体的な手続きや条件は、管轄する家庭裁判所などの最新案内をご確認ください。

相続人の一部だけで限定承認できますか。

限定承認は相続人全員の共同申述が必要です。一部の相続人だけではできません。全員合意を先に確認してください。

3か月以内に調査が終わらない場合はどうしますか。

3か月以内に判断材料が得られない場合は、期間伸長の申立てにより家庭裁判所が期間を伸ばすことができます。期限前に相談してください。期限を過ぎると単純承認とみなされるおそれがあるため注意が必要です。

戸籍がそろわないまま申述できますか。

申述前に入手が不可能な戸籍等がある場合は、申述後に追加提出することでも差し支えないと案内されています。法定相続情報一覧図の写しで代用できる場合もあるため、申述する家庭裁判所へ確認してください。

相続の限定承認の申述(裁判所)相続の限定承認の申述:裁判所の手続き案内で期限・申述先・費用・書類を確認できます。相続の限定承認の申述書(裁判所)相続の限定承認の申述書:書式・当事者目録・遺産目録と記入例を取得できます。相続の放棄の申述(裁判所)相続の放棄の申述:単独申述や1人当たり費用など限定承認との違いを確認できます。