保管申請の撤回と遺言書の返還手順
法務局に預けた自筆証書遺言書の保管を取りやめたいときは、遺言者本人が原本を保管している遺言書保管所へ予約して出頭し、撤回書と顔写真付き身分証で保管申請の撤回をします。手数料は不要で、遺言書は返還されます。2026年9月14日時点の法務省と東京法務局の公式情報で確認しています。
この記事の対象と対象外を先に確認します。対象は、法務局の自筆証書遺言書保管制度で遺言書を預けている遺言者本人が、保管を取りやめて返還を受けたい場合、内容を変更するため旧版を撤回して新版を再保管したい場合、転居を機に保管先を見直したい場合です。相続開始後に相続人が行う遺言書情報証明書の請求や検認の要否は対象外とします。遺言の内容自体の相談は法務局では受け付けていないため、弁護士等の専門家へご相談ください。
撤回と混同しやすい手続の違い
撤回、閲覧、変更の届出は申請先と方法が異なります。取り違えると二度手間になります。
| 手続 | できる方 | 申請先 | 予約・方法 |
|---|---|---|---|
| 保管申請の撤回(返還) | 遺言者本人のみ | 原本を保管している遺言書保管所のみ | 予約必須・本人出頭 |
| 遺言書の閲覧(モニター) | 遺言者本人のみ(生前) | 全国の遺言書保管所 | 予約必須・本人出頭 |
| 遺言書の閲覧(原本) | 遺言者本人のみ(生前) | 原本保管所のみ | 予約必須・本人出頭 |
| 住所等の変更の届出 | 遺言者本人または法定代理人 | 全国の遺言書保管所 | 予約必須・来庁または郵送可 |
取り下げたい理由別の分岐
理由によって撤回後の動きが変わります。該当する分岐を確認します。
取り下げ理由別の分岐リストです。
- 預けるのをやめて自宅等で保管したい:撤回して返還を受けます。返還後の自宅保管でも遺言の効力は変わりません。
- 内容を変更したい:旧版を撤回し、新版を改めて保管申請します。旧版を残したまま新版を追加すると複数通が残り相続人に分かりにくくなるため、最新版だけが残る形が推奨されています。
- 遠方へ転居する予定がある:転居前に旧住所地管轄の原本保管所で撤回し、転居後に新住所地管轄の保管所へ再保管する方法があります。転居後に撤回しようとすると旧保管所まで出向く必要があります。
手順1:原本保管所と保管番号を確認します。
保管証に記載の遺言書保管所名と保管番号を確認します。撤回は原本を保管している遺言書保管所でのみできます。住所地や本籍地の最寄りでは受け付けられない場合があります。保管証は再発行ができないため、写しを家族等へ共有している場合も原本の所在は保管証で特定します。
手順2:撤回書を作成します。
法務省が示す様式の遺言書の保管の申請の撤回書を作成します。様式は法務省の申請書等ページから取得でき、最寄りの法務局窓口にも備え付けられています。パソコン入力と手書きのいずれも可能ですが、読み取り誤りを防ぐため該当欄は明瞭に記入します。事前に作成せずに来庁すると予約時間内に終わらず再来庁になる場合があります。
手順3:予約を取ります。
確認した原本保管所の予約を法務局手続案内予約サービスで取ります。撤回は予約が必須です。予約なしでは受け付けられません。日時と保管所を間違えないよう、保管証の記載と予約画面を照合します。
手順4:本人が出頭して撤回します。
予約日時に遺言者本人が出頭します。持参するのは撤回書と顔写真付きの官公署発行の身分証です。運転免許証やマイナンバーカード等で、有効期限内のものが必要です。手続時点で該当書類がない方にはマイナンバーカードの取得が案内されています。保管申請時以降に氏名や住所等に変更があり、変更の届出をしていない場合は変更事項を証する書面も必要です。変更事項の書面がないと遺言書を特定できず手続ができない場合があります。添付書類は不要で、手数料は不要です。
持参物の最終確認
撤回手続の持参物の確認リストです。
収入印紙や保管料の支払いは不要です。法務省の手数料表では、保管申請の撤回と住所等の変更の届出は手数料不要と明記されています。納付用紙への貼付もありません。
手順5:遺言書の返還を受けます。
手続が終わると預けていた遺言書が返還されます。一度保管した遺言書は撤回しない限り返却されない仕組みのため、返還後は自宅等での保管に切り替わります。紛失や改ざん防止のメリットはなくなるため、保管場所は慎重に決めます。内容を変更する場合は、この返還後に新版を作成して改めて保管申請をします。
内容変更で再保管するときの注意点
再保管は新規の保管申請と同じ扱いです。新しい遺言書の作成、管轄保管所の選択、申請書の作成、予約、本人出頭、住民票の写し等の添付書類、顔写真付き身分証、手数料3,900円(収入印紙)が必要です。2通目以降の追加保管は最初の保管所に限られる扱いがあるため、撤回して最新版だけにする整理が分かりやすくなります。東京法務局の案内でも、令和4年1月1日付け遺言書と同年6月1日付け遺言書が並存する例では、最新版だけを残す整理が推奨されています。
よくある質問
返還されると遺言は無効になりますか。
効力とは関係ありません。法務省と東京法務局の案内では、保管申請の撤回は遺言の効力とは関係ないと説明されています。返還後に自宅等で保管しても、遺言としての効力が手続で消えることはありません。
家族が代理で取り下げられますか。郵送できますか。
できません。撤回ができるのは遺言者本人のみで、原本保管所への本人出頭と予約が必要です。郵送や代理人による撤回はできません。変更の届出だけが法定代理人と郵送を認めています。
取り下げに費用はかかりますか。
手数料は不要です。収入印紙の納付はありません。ただし、内容変更後に改めて保管申請をする場合は、遺言書1通につき3,900円を収入印紙で納めます。
法務省の遺言者の手続案内(保管申請の撤回)で手順と持参物を確認し、手数料表で撤回無料を確認の上、東京法務局の撤回・変更届の案内で転居と再保管の分岐を確認します。様式は法務省の申請書等ページの撤回書を使用します。
法務省 遺言者の手続:遺言書の保管の申請の撤回法務省 遺言者の手続:遺言書の保管の申請の撤回法務省 手数料:保管申請の撤回は手数料不要法務省 手数料:保管申請の撤回は手数料不要東京法務局 保管申請の撤回や変更届出について東京法務局 保管申請の撤回や変更届出について法務省 自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等(撤回書様式)法務省 自筆証書遺言書保管制度で使用する申請書等(撤回書様式)当サイトの内容は参考情報です。具体的な手続き・条件は、管轄する法務局(遺言書保管所)の最新案内をご確認ください。遺言の内容に関する相談は法務局では受け付けていないため、必要に応じて弁護士等の専門家へご相談ください。