健康保険・厚生年金の被保険者資格取得届は「事実発生から5日以内」が期限ですが、過ぎても遡って提出できます。提出日ではなく実際の資格取得日(採用日など)で認定され、保険料も事実発生日に遡って徴収されます。2019年4月以降は、受付日から60日以上遡る場合でも賃金台帳・出勤簿の添付は原則不要になりました。

手続きの概要

健康保険・厚生年金保険では、適用事業所に常時使用される人は国籍や賃金額にかかわらず被保険者となります。事業主が「被保険者資格取得届」を日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出し、従業員本人は基礎年金番号またはマイナンバーの確認書類を事業主へ提示します。協会けんぽの事業所では、届出後に「資格情報のお知らせ」や必要に応じて「資格確認書」が交付されます。

対象者

この届出が必要になる主なケースです。

  • 新たに正社員・契約社員として入社したとき(試用期間中も含む)
  • パート・アルバイトが通常労働者の4分の3以上の所定労働時間・日数で常時使用に該当したとき
  • 特定適用・任意特定適用・国公立事業所で短時間労働者の5要件(週20時間以上・月8.8万円以上など)を満たしたとき
  • 70歳以上の人が新たに使用されたとき、または被保険者が70歳到達後も継続して要件を満たすとき(70歳以上被用者該当届)

期限・提出先・提出方法

基本の提出ルールは次のとおりです。
項目内容
提出期限事実発生から5日以内(採用日・資格取得日が起算日。5日が土日祝でも原則5日以内)
提出者事業主(事業所の事務担当者)が日本年金機構へ提出
提出先事業所を管轄する事務センター または 管轄の年金事務所
提出方法電子申請/電子媒体(CD・DVD)/郵送/窓口持参。電子申請は事業所向けオンラインサービスから送信できます。
従業員側の手続き基礎年金番号通知書またはマイナンバーを事業主へ提示(マイナンバーは番号確認と本人確認が必要)

5日を過ぎて出し忘れたときの対処法

期限を過ぎても「今から遡って提出する」のが正しい対処です。日本年金機構は、届出漏れが判明した場合はさかのぼって資格取得届を提出し、事実が発生したときにさかのぼって保険料を支払う取扱いを案内しています。資格取得日は届出日ではなく、実際に使用関係が発生した日(採用日など)を記入します。

資格取得日と事実関係を確認する。採用日・雇用契約・出勤実績で実際の使用開始日を確定します。60歳以上の再雇用で退職の翌日に再雇用された場合は、同時に資格喪失届も必要か確認します。

最新の様式で被保険者資格取得届を作成する。日本年金機構の「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を使用し、氏名・生年月日・マイナンバーまたは基礎年金番号・報酬月額・資格取得年月日を正確に記入します。

事業主の本人確認を徹底する。年金機構は偽名取得防止のためマイナンバーまたは基礎年金番号の本人確認を徹底するよう求めています。未記入のまま提出すると返戻されます。

事務センターまたは年金事務所へ速やかに提出する。電子申請、郵送、窓口のいずれかで提出します。郵送の場合は消印ではなく到達日が受付日となる点に注意し、速達や電子申請を検討します。

保険料の遡及精算と従業員への説明を行う。届出後は事実発生日に遡って標準報酬月額が決定され、保険料も遡及徴収されます。従業員負担分は翌給与などで適切に精算し、給与明細で説明します。

60日以上遡る場合の添付書類は今どうなっている?

検索上位の古い解説では「資格取得日が受付日から60日以上遡る場合は賃金台帳・出勤簿の写しが必要」と書かれていることがあります。実際は2019年4月の取扱い変更で、この4ケースの添付は原則廃止されました。事業所調査の際に確認する運用に変わっています。

添付書類の取扱い変更(日本年金機構 2019年4月26日公表・2020年12月25日最終更新)
届書以前添付を求めていたケース現在の取扱い
被保険者資格取得届・70歳以上被用者該当届資格取得年月日が受付年月日から60日以上遡る場合届出時の添付不要。事業所調査時に確認
被保険者資格喪失届・70歳以上被用者不該当届資格喪失年月日が受付から60日以上遡る場合同上
報酬月額変更届改定年月が受付から60日以上遡る場合同上
報酬月額変更届改定後が従前より5等級以上下がる場合同上

この変更は2019年4月以降の取扱いです。古い社労士ブログや書籍のまま「60日で賃金台帳が必須」と説明している場合は、現在の公式取扱いと異なります。最新の運用は日本年金機構の「届出等における添付書類の取扱いの変更について」で確認しています(2026年8月22日確認)。

よくある失敗と注意点

出し忘れ以外にも次の点で差し戻しや返戻が起こります。

  • マイナンバーまたは基礎年金番号が未記入のまま提出 → 返戻されます。必ず本人に確認して記入します。
  • 資格取得年月日を届出日で記入 → 事実発生日(採用日)を記入するのが正しい取扱いです。
  • 70歳以上の再雇用で同時に資格喪失届を出し忘れ → 60歳以上で退職翌日に再雇用された場合は、喪失届と取得届を同日付で併せて提出します。
  • 電子申請で添付ファイルを入れ忘れ → 旧基準では添付不要になったケースを除き、必要な場合のみPDF・JPEGで添付します。
  • 従業員への保険料・年金影響の説明不足 → 遡及徴収や年金返納の可能性があるため、事前に従業員へ説明と同意を得ておきます。

遅延を防ぐためのチェックリスト

入社・資格取得時の確認に使えます。

健康保険証が届く前に受診したいとき

資格取得届を提出してから資格情報のお知らせ・資格確認書が届くまでや、マイナ保険証の紐付けが反映されるまでタイムラグがあります。早急に医療機関で受診する必要がある場合は、日本年金機構が案内する「被保険者資格取得後、早急に診療を受けようとするとき」の手続き(健康保険 被保険者資格証明書の交付など)を活用できます。協会けんぽや健康保険組合の窓口へご確認ください。

よくある質問

提出期限を過ぎたら罰則はありますか。

健康保険法・厚生年金保険法に罰則の規定はありますが、実務ではまず遡って届出と保険料の精算を求められます。故意に届け出ない場合や督促に応じない場合に行政指導や罰則が問題になります。気づいた時点で速やかに提出すれば、遡及での是正が可能です。

資格取得日は届出日になりますか。

なりません。資格取得日は実際に使用関係が発生した日(採用日など)です。5日を過ぎてから提出しても、事実発生日にさかのぼって資格取得と保険料が扱われます。届出日を受付日と混同して記入しないよう注意してください。

60日以上遡る場合は賃金台帳が必要ですか。

2019年4月以降は、資格取得届が受付日から60日以上遡る場合でも、届出時の賃金台帳・出勤簿の添付は原則不要です。事業所調査の際に確認する運用に変更されました。ただし、60歳以上再雇用で就業規則・退職辞令・雇用契約書等が必要なケースや、国保組合への適用除外承認など一部例外では引き続き添付が必要です。

次の手続きと関連情報

資格取得と一体で確認したい手続きです。退職時の資格喪失届や固定的賃金変動時の月額変更届も同じく5日以内・速やかのルールがあります。7月の算定基礎届は7月1日〜10日(土日なら翌営業日)が提出期間です。忘れた場合の影響と再提出の流れも合わせて確認しておくと、年間を通じて社会保険の届出漏れを防げます。