退職所得の受給に関する申告書を出し忘れても、確定申告で所得税額を精算できます。20.42%で源泉徴収された税額と正規の税額の差額を還付申告で取り戻します。申告書は勤務先へ、精算は所轄税務署へという分岐が要点です。

症状と前提の確認

退職所得の受給に関する申告書は、退職手当等の支払を受ける時までに退職手当等の支払者へ提出する書類です。国内で退職手当等の支払を受ける居住者が対象です。この申告を行わない場合は、その退職手当等の金額に20.42%の税率による源泉徴収が行われます。20.42%は所得税と復興特別所得税の合計です。平成25年1月1日から令和29年12月31日までの間に支払を受ける退職手当等が対象です。2026年9月12日時点の国税庁情報で確認しています。

まず次の4点を確認します。

なぜ多く引かれたのか

申告書を提出した場合は、支払者が退職所得控除と2分の1課税を反映して所得税額を計算し、支払の際に源泉徴収します。そのため原則として確定申告は必要ありません。一方、申告書を提出しない場合は、退職所得控除も2分の1課税も使わず、退職金の支払金額に20.42%をかけた金額が源泉徴収されます。受給者本人が確定申告を行うことにより所得税額の精算をします。

申告書ありとなしの比較表です。
区分源泉徴収の計算確定申告の扱い
申告書を提出した退職所得控除と2分の1課税を反映して計算します原則不要です。医療費控除などで申告する場合は退職所得を含めます
申告書を出し忘れた支払金額の20.42%が源泉徴収されます本人が確定申告で精算し、納め過ぎを還付で取り戻します

回復手順の全体像

源泉徴収票で支払金額と源泉徴収税額を確認します。

退職所得の源泉徴収票の支払金額欄と源泉徴収税額欄を見ます。申告書を出していない場合は、支払金額の20.42%に相当する金額が引かれています。票を紛失した場合は勤務先へ再発行を依頼します。金額の根拠が分からないまま申告しないでください。

同一年の他の退職手当を確認します。

その年中に他の支払者から退職手当等の支払がある場合は、支払済の退職手当等の支払者の氏名、金額、源泉徴収税額、支払年月日、勤続年数などを申告書に記入し、支払済分の退職所得の源泉徴収票を添付します。複数の支払者に同時に申告書を出す場合は提出の順位も記載します。勤続年数の通算や退職所得控除の計算が通常と異なります。

確定申告書を作成します。

国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内に沿って金額を入力し、確定申告書を作成します。退職所得は原則として他の所得と分離して税額を計算します。退職所得の金額は、原則として収入金額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1です。退職所得控除額は勤続年数で決まり、20年以下は40万円に勤続年数をかけた金額、20年超は800万円に70万円を加えた計算になります。障害による退職や前年以前の退職金がある場合は計算が異なります。

所轄税務署へ還付申告として提出します。

還付申告書は、その年の翌年1月1日から5年間提出できます。提出先は、提出するときの納税地を所轄する税務署長です。確定申告期間とは関係なく提出できます。e-Taxや書面で提出し、還付金の処理状況は国税庁の案内で確認します。期限を過ぎると還付を受けられなくなりますので早めに手続きします。

国税庁の案内では、退職所得の受給に関する申告書の提出時期は退職手当等の支払を受ける時までとされています。支払者は税務署長から特に求められた場合以外は税務署へ提出せず保管します。支払を受けた後に勤務先へ申告書を出し直して源泉徴収をやり直す方法は案内されていません。支払後の精算は、受給者本人の確定申告で行います。

同一年に2か所以上から退職金がある場合

同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるときは、後の支払者が前の支払分も含めて源泉徴収税額を計算します。支払済の記載を漏らすと税額が不足します。国税庁の質疑応答事例では、支払済の退職手当を記載しないで申告書を出した場合の是正方法が示されています。控除後の金額がマイナスになる場合は源泉徴収税額はなくなり、マイナス分の還付には本人の確定申告が必要です。2か所退職の心当たりがある方は、源泉徴収票をそろえてから申告します。

必要書類と提出先の整理

申告書と確定申告の提出先は異なります。混同しないことが重要です。

  • 退職所得の受給に関する申告書の提出先は退職手当等の支払者です。税務署へ直接出す書類ではありません
  • 確定申告・還付申告の提出先は所轄税務署です。その年の翌年1月1日から5年間に提出します
  • 他の退職手当がある場合は支払済分の退職所得の源泉徴収票を申告書に添付します
  • 確定申告書の作成には退職所得の源泉徴収票と支払金額の記録が必要です
国税庁:退職所得の受給に関する申告の手続案内国税庁の退職所得の受給に関する申告の手続案内です。提出時期や提出先、20.42%の取扱いを確認できます。国税庁:退職金を受け取ったときの税額と精算国税庁の退職金を受け取ったときの税額計算と確定申告での精算の説明です。

よくある質問

還付申告はいつまでに出せますか。

還付申告はその年の翌年1月1日から5年間提出できます。5年を過ぎると還付を受けられなくなります。早めに所轄税務署へ相談します。

申告書を出したのに確定申告が必要と言われました。

申告書を出していても、医療費控除や寄附金控除などで確定申告書を出す場合は、退職所得の金額を含めて申告する必要があります。国税庁の案内で対象を確認します。

計算が合わないときはどこへ相談しますか。

国税に関する相談窓口で確認します。申告書の提出先は支払者、確定申告の提出先は所轄税務署です。勤続年数や障害退職、前年以前の退職金の有無で計算が変わるため、源泉徴収票を持って相談します。