雇用保険マルチジョブホルダー制度は、複数の事業所で働く65歳以上の方が、異なる2社でそれぞれ週5時間以上20時間未満、合計週20時間以上などの条件を満たす場合に、本人の申出で雇用保険へ加入できる制度です。手続きは住所または居所を管轄するハローワークで行います。
マルチジョブホルダー制度の対象条件
マルチ高年齢被保険者として申し出るには、次の条件をすべて満たす必要があります。
| 勤務の組み合わせ | 制度の対象になり得るか | 理由 |
|---|---|---|
| A社12時間+B社8時間 | 対象になり得ます | 両社が5時間以上20時間未満で、合計20時間です。 |
| A社15時間+B社4時間+C社6時間 | A社とC社なら対象になり得ます | B社は週5時間未満のため選べません。A社とC社は合計21時間です。 |
| A社20時間+B社6時間 | マルチ制度ではなく通常加入を確認します | A社だけで週20時間以上のためです。 |
| A社10時間+B社9時間 | 対象外です | 2社合計が週20時間未満です。 |
| 同じ事業主のA店12時間+B店9時間 | 対象外です | 選ぶ2事業所は異なる事業主である必要があります。 |
通常の雇用保険との違い
| 比較項目 | 通常の雇用保険 | マルチジョブホルダー制度 |
|---|---|---|
| 主な労働時間要件 | 主たる1事業所で週20時間以上 | 異なる2事業所で各週5時間以上20時間未満、合計週20時間以上 |
| 年齢 | 年齢だけで一律に除外されません | 65歳以上が対象 |
| 雇用見込み | 原則31日以上 | 選ぶ2事業所のそれぞれで31日以上 |
| 資格取得の届出 | 通常は事業主が行う | 原則として本人が申し出る |
| 加入日 | 要件を満たす資格取得日を事業主が届け出る | ハローワークが申出を受理した日。遡及不可 |
| 電子申請 | 多くの通常手続きはe-Govに対応 | マルチ雇入届・マルチ喪失届は電子申請非対応 |
申出前に2つの事業所を選ぶ
3つ以上の事業所で働いている場合は、本人が雇用保険の適用を受ける2事業所を選びます。賃金や今後の雇用見込みも確認し、2社とも対象条件を満たす組み合わせにします。
資格取得の申出に必要な書類
| 書類 | 準備する人 | 確認点 |
|---|---|---|
| 雇用保険マルチジョブホルダー雇入・資格取得届 | 本人と各事業主 | 2事業所について各1通作成し、本人欄を記入後、各事業主へ事業主欄の記載を依頼します。 |
| 賃金台帳・出勤簿 | 各事業主 | 原則として記載日の直近1か月分など、賃金と勤務実績を確認できる資料を用意します。 |
| 労働者名簿 | 各事業主 | 雇用関係と労働者情報の確認に使います。 |
| 雇用契約書・労働条件通知書等 | 各事業主 | 週所定労働時間と31日以上の雇用見込みを確認します。 |
| 個人番号登録・変更届 | 本人 | マイナンバーを記載します。 |
| 被保険者資格取得時アンケート | 本人 | 資格取得申出時に提出します。 |
| 個人番号・本人確認資料 | 本人 | マイナンバーカード等を用意します。代理人提出では委任状も必要です。 |
マルチジョブホルダー制度へ加入する手順
選ぶ2事業所について、各社の週所定労働時間が5時間以上20時間未満、2社合計が20時間以上、各社31日以上の雇用見込みであることを雇用契約書や労働条件通知書で確認します。
ハローワークまたは厚生労働省の案内から、マルチ雇入届、個人番号登録・変更届、資格取得時アンケートを入手し、本人記載欄を記入します。
2社それぞれへマルチ雇入届の事業主欄の記載と、賃金台帳、出勤簿、労働者名簿、雇用契約書等の確認資料の交付を依頼します。
2社分の届書と確認資料、個人番号登録・変更届、アンケート、本人確認資料をそろえ、本人の住所または居所を管轄するハローワークへ窓口または郵送で提出します。代理人による提出には委任状が必要です。
ハローワークの確認後に届く資格取得確認通知書、雇用保険被保険者証、将来使うマルチ喪失届等を確認し、紛失しないよう保管します。各事業主も事業主通知用の確認通知書を保管します。
加入後の保険料と任意脱退
資格取得日以後に各事業主から支払われる賃金について、通常の雇用保険と同様に雇用保険料がかかります。各事業主は、自社が支払う賃金総額へその年度の雇用保険料率を乗じて計算します。
離職・労働時間変更時は10日以内に喪失届を確認
選んだ事業所を離職した、一方の週所定労働時間が5時間未満または20時間以上になった、2社合計が週20時間未満になった場合などは、マルチ高年齢被保険者の資格喪失を確認します。本人は、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、2事業所分のマルチ喪失届と確認資料を住居所管轄ハローワークへ提出します。
離職後に受けられる可能性がある給付
マルチ高年齢被保険者として離職し、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることや失業状態などの条件を満たすと、高年齢求職者給付金を受けられる場合があります。被保険者期間が1年未満なら基本手当日額の30日分、1年以上なら50日分が一時金の基礎です。1社だけを離職した場合の計算や、残る勤務先・3社目の状況により扱いが変わります。
よくある質問
同じ会社の2店舗で合計週20時間なら対象ですか?
対象外です。厚生労働省Q&Aは、選ぶ2事業所について異なる事業主であることを必要としています。1社全体での雇用契約や週所定労働時間を勤務先とハローワークへ確認してください。
条件を満たしたら必ず申し出る必要がありますか?
初回は必ずしも加入しなければならない制度ではなく、本人が希望して申し出ます。ただし、資格取得後は通常の雇用保険と同様に扱われ、自由な脱退はできません。
e-Govでオンライン申請できますか?
できません。厚生労働省の申請パンフレットは、マルチジョブホルダー関係の資格取得・喪失手続きについて電子申請を行っていないと案内しています。
勤務先が届書を書いてくれない場合はどうしますか?
本人記載欄を記入した届書や手元の労働条件資料を持って、住居所を管轄するハローワークへ相談してください。ハローワークから事業主へ確認が行われる場合があります。
次にすること
まず、勤務している各社の労働条件通知書や雇用契約書で、週所定労働時間と雇用見込みを確認してください。対象になり得る2社を選び、両社へマルチ雇入届の記載と確認資料の交付を依頼します。書類をそろえる前でも判断に迷う場合は、住所または居所を管轄するハローワークへ相談します。
全国のハローワークの所在案内を確認する厚生労働省の全国案内から、住所または居所を管轄するハローワークを確認できます。高年齢求職者給付金の条件と申請方法を確認するマルチ高年齢被保険者が離職した後の高年齢求職者給付金について、対象条件、30日分・50日分、必要書類と申請期限を確認できます。雇用保険被保険者証の役割を確認する資格取得後に交付される雇用保険被保険者証の用途、被保険者番号、紛失時の再交付を確認できます。雇用保険の加入期間の通算条件を見る雇用保険の被保険者期間を別の就職先へ通算できる条件を確認できます。