短時間労働者の社会保険加入要件のうち、「所定内賃金が月額8.8万円以上」の要件は2026年10月に撤廃予定です。ただし、2026年7月27日時点ではまだ現行要件です。撤廃後も週20時間以上、学生でないこと、2か月を超える雇用見込み、勤務先の企業規模要件などは残ります。
2026年10月予定の改正要点
| 確認項目 | 2026年7月27日時点 | 2026年10月の撤廃後 |
|---|---|---|
| 所定内賃金 | 月額8.8万円以上が短時間労働者の加入要件の一つ | 賃金額の要件を撤廃予定 |
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 | 20時間以上の要件は残る |
| 学生区分 | 原則として学生でないこと | 原則として学生でないことは残る |
| 雇用見込み | 2か月を超えて雇用される見込み | この要件は残る |
| 勤務先の企業規模 | 原則として厚生年金保険の被保険者数が51人以上の企業等 | 2026年10月時点では企業規模要件は別に残る |
| 通常の労働者の4分の3基準 | 別の加入基準として適用 | 撤廃の対象ではない |
この改正が関係するパート・アルバイト
今回の賃金要件撤廃が直接関係するのは、通常の労働者の週所定労働時間または月所定労働日数の4分の3未満で働き、特定適用事業所、任意特定適用事業所、国・地方公共団体の事業所などで短時間労働者として判定される方です。
2026年7月27日時点で、短時間労働者として確認する主な条件です。
- 勤務先が厚生年金保険の被保険者数51人以上の企業等、任意特定適用事業所、または国・地方公共団体の事業所に当たる
- 通常の労働者の週所定労働時間または月所定労働日数の4分の3未満である
- 週の所定労働時間が20時間以上である
- 原則として学生ではない
- 所定内賃金が月額8.8万円以上である(2026年10月に撤廃予定)
- 2か月を超えて雇用される見込みがある
8.8万円要件と「106万円の壁」の違い
現行の加入判定で使うのは、原則として実際の年間収入ではなく、雇用契約などに基づく所定内賃金の月額8.8万円以上という要件です。この月額を12か月分に換算した約106万円が「106万円の壁」と呼ばれますが、税金や健康保険の被扶養者認定を一律に決める年収上限ではありません。
| 基準・通称 | 意味 | 2026年10月予定の改正との関係 |
|---|---|---|
| 所定内賃金月額8.8万円 | 短時間労働者の健康保険・厚生年金保険加入要件の一つ | 撤廃予定 |
| いわゆる年収106万円 | 月額8.8万円を年額換算した説明上の目安 | 実際の年収だけで加入を判定する基準ではない |
| 週20時間 | 短時間労働者の週所定労働時間要件 | 撤廃後も残る |
| 税法上の扶養・配偶者控除 | 所得税の別制度 | 自動的には変更されない |
| 健康保険の被扶養者認定 | 加入する健康保険の別基準 | 今回の賃金要件撤廃だけで一律に変更されるものではない |
撤廃後も残る加入条件
| 条件 | 確認方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| 週20時間以上 | 就業規則や雇用契約書などの週所定労働時間を確認 | 実際の労働時間が2か月連続で週20時間以上となり、その後も続く見込みなら3か月目から対象になる場合があります |
| 学生でないこと | 在学状況と公式の学生区分を確認 | 休学中、定時制・通信制などは加入対象となる場合があります |
| 2か月を超える雇用見込み | 契約期間、更新予定、同条件の更新実績を確認 | 2か月以内の契約でも更新予定等があれば対象になる場合があります |
| 勤務先の企業規模 | 法人全体の厚生年金保険被保険者数などを確認 | 2026年時点の原則は51人以上。任意特定適用事業所等は別扱いです |
| 4分の3基準 | 通常の労働者との所定労働時間・日数を比較 | 該当する場合は短時間労働者の企業規模要件とは別に加入対象です |
事業主・人事労務担当者が行う準備
通常の労働者の4分の3未満で働くパート・アルバイトを一覧にし、週所定労働時間、学生区分、契約期間、所定内賃金を確認します。
勤務先が特定適用事業所、任意特定適用事業所、国・地方公共団体の事業所のどれに当たるかを確認します。法人の場合、企業規模は同一法人格の事業所を合計して判定します。
2026年10月の賃金要件撤廃だけでなく、週20時間、学生区分、2か月を超える雇用見込み、4分の3基準を含めて対象者を再判定します。
新たに加入対象となる従業員がいる場合は、本人へ保険料負担、健康保険・厚生年金保険への加入、扶養や勤務先手当の確認が必要になることを説明します。個別の保険料は標準報酬月額と保険料率で異なります。
資格取得日と届出方法を最新の公式案内で確認し、事実発生から5日以内に被保険者資格取得届を日本年金機構へ提出します。
加入対象になった場合の資格取得届
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出者 | 事業主 |
| 提出期限 | 事実発生から5日以内 |
| 届書 | 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届 |
| 提出先 | 日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所 |
| 提出方法 | 電子申請、電子媒体、郵送、窓口持参 |
| 添付書類 | 原則不要。60歳以上の継続再雇用や国保組合の適用除外などは別途必要 |
| 従業員が用意する情報 | 基礎年金番号通知書・年金手帳またはマイナンバーカードなど、事業主が届書を作成するために必要な情報 |
資格取得届で多い記入ミス
日本年金機構が案内している主な不備です。
- 資格取得年月日を記入していない
- 個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号を記入していない
- 基礎年金番号を記入したのに住所を記入していない
- 短時間労働者なのに備考欄の該当項目へ丸印を付けていない
- 報酬月額の通貨・現物・合計欄をすべて記入していない
- 60歳以上の継続再雇用で、資格喪失届または添付書類が不足している
従業員が確認すること
勤務先から社会保険加入の案内を受けたら、次の点を確認します。
- 週所定労働時間、契約期間、学生区分など、加入判定に使われた条件を確認する
- 資格取得日と、給与から保険料控除が始まる時期を勤務先へ確認する
- 家族の健康保険の被扶養者になっている場合は、扶養を外れる手続きを確認する
- 配偶者の勤務先の家族手当・配偶者手当が変わるか、該当する勤務先へ確認する
- iDeCoや国民年金基金を利用している場合は、加入区分変更や資格喪失の手続きを各窓口で確認する
- マイナ保険証の資格情報が反映される前に受診予定がある場合は、勤務先や加入する健康保険へ資格確認方法を相談する
注意点・よくある誤解
賃金要件の撤廃だけで加入可否を決めないでください。
- 2026年10月になれば全パートが加入する:週20時間、学生区分、雇用見込み、勤務先の条件などが残ります
- 2026年7月時点で8.8万円要件はなくなっている:公式案内では2026年10月の撤廃予定で、現時点では現行要件です
- 106万円を超えなければ社会保険に入らない:加入判定は年間収入だけでなく、週所定労働時間や月額所定内賃金などで行います
- 8.8万円要件の撤廃で税法上の扶養も同時に変わる:所得税と社会保険は別制度です
- 従業員数51人未満なら誰も加入しない:4分の3基準や任意特定適用事業所など、別の加入経路があります
- 企業規模要件も2026年10月に36人以上へ変わる:36人以上への拡大は2027年10月予定です
よくある質問
月額8.8万円以上の要件は、もう撤廃されていますか?
いいえ。2026年7月27日時点では現行要件です。2026年10月の撤廃予定が案内されていますが、正確な施行日と資格取得日の扱いは最新の公式情報で確認してください。
2026年10月から、週20時間未満でも加入しますか?
賃金要件の撤廃だけでは週20時間要件はなくなりません。通常の労働者の4分の3基準に該当する場合は別ですが、短時間労働者としての加入判定では週20時間以上を引き続き確認します。
「106万円の壁」がなくなれば、扶養の年収を気にしなくてよいですか?
一律にはいえません。今回撤廃予定なのは、短時間労働者の社会保険加入判定に使う月額8.8万円要件です。所得税、健康保険の被扶養者認定、勤務先の手当はそれぞれの基準を確認してください。
従業員36人の会社も2026年10月から対象ですか?
賃金要件の撤廃と企業規模要件の拡大は時期が異なります。日本年金機構は、36人以上への拡大を2027年10月からと案内しています。ただし、任意特定適用事業所や4分の3基準に該当する場合は別です。
加入対象になったら、従業員本人が年金事務所へ申請しますか?
資格取得届は事業主が提出します。従業員は、基礎年金番号通知書・年金手帳またはマイナンバーカードなど、事業主が届書を作成するために必要な情報を用意します。
公式情報と確認日
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(確認日:2026年7月27日)日本年金機構・2026-07-27確認厚生労働省「適用拡大 Q&A|社会保険適用拡大特設サイト」(確認日:2026年7月27日)厚生労働省・2026-07-27確認日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」(確認日:2026年7月27日)日本年金機構・2026-07-27確認日本年金機構「就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き」(確認日:2026年7月27日)日本年金機構・2026-07-27確認次にすること
事業主・人事労務担当者は、まず4分の3未満で働く従業員の週所定労働時間、学生区分、契約期間、所定内賃金を一覧化してください。次に勤務先の企業規模と適用区分を確認し、2026年10月の施行資料が公表されたら対象者と資格取得日を再判定します。従業員は、勤務先から案内された加入日と給与控除、扶養・手当への影響を確認してください。
最新の加入要件と改正予定を確認する日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」従業員が退職するときの資格喪失手続きを確認する従業員退職時の社会保険資格喪失届|提出期限・必要書類・提出方法加入後の資格確認書と資格情報のお知らせの違いを確認する資格確認書とは?届く人・申請が必要なケース・資格情報のお知らせとの違い