相続人がいない財産は、利害関係人または検察官が被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ相続財産清算人の選任を申し立てます。収入印紙800円分と官報公告料5,582円が目安で、出生から死亡までの戸籍一式と財産資料をそろえて申立書・財産目録・相続関係図を提出します。

手続きの概要

相続人の存在や不存在が明らかでないときは、家庭裁判所が申立てにより相続財産清算人を選任します。相続人全員が相続放棄をして結果として相続する者がいなくなった場合も含まれます。清算人は債権者への債務支払いなど清算を行い、残った財産は国庫に帰属します。特別縁故者への分与が認められる場合もあります。裁判所の現在の案内では「相続財産清算人の選任」と表記されています。古い案内に「相続財産管理人」とあるのは同じ趣旨の手続ですので、申立てには清算人用の書式を使用します。2026年9月14日時点の裁判所情報で確認しています。

対象者

申し立てることができる方は次のとおりです。相続人不存在が前提のため、相続人自身が申し立てる手続ではありません。

申立人の範囲

  • 利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)
  • 検察官

たとえば借金の返済を受けたい債権者、遺贈を受けた方、長年療養看護をした方などが利害関係人に当たる場合があります。申立人が利害関係人のときは、利害関係を証する資料が必要です。個別事情によって判断が異なるため、該当性に迷うときは管轄の家庭裁判所へご確認ください。

申立先と費用

申立先と費用は全国共通の原則です。郵便料は各裁判所の家庭裁判所の案内で確認します。

申立先と費用の一覧
項目内容
申立先被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
収入印紙800円分
連絡用郵便切手家庭裁判所の案内で確認し、保管金として納付できる場合があります
官報公告料5,582円(家庭裁判所の指示があってから納めます)
予納金財産内容により管理費用に不足が出る可能性がある場合に相当額を求められることがあります

必要書類の確認順

標準的な添付書類は次のとおりです。同じ書類は1通で足ります。審理のために追加書類を求められることがあります。

標準的な申立添付書類

  • 申立書、財産目録、相続関係図(裁判所書式を使用します)
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 死亡している子・直系尊属・兄弟姉妹・代襲おいめいに係る所定の戸籍謄本(該当する場合)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 財産を証する資料(不動産登記事項証明書、未登記は固定資産評価証明書、預貯金残高が分かる通帳写しや残高証明書等)
  • 利害関係を証する資料(戸籍謄本、金銭消費貸借契約書写し等)
  • 清算人候補者がある場合の候補者の住民票または戸籍附票

申立書・財産目録・相続関係図は裁判所ウェブサイトの「相続財産清算人の選任の申立書」ページから入手できます。申立書はPDFとWord、財産目録はPDFとWord、相続関係図はPDFとExcelで用意されています。記入例も同じページにあります。実際に申立てを受けた家庭裁判所では、書面照会や事情聴取をする場合があります。

手順1から手順4

手順1は戸籍と財産資料を集めます。被相続人の出生から死亡までの戸籍、父母の戸籍、該当する親族の戸籍、住民票除票または戸籍附票、財産資料、利害関係資料をそろえます。戸籍の取り漏れが多いため、除籍と改製原戸籍を含めて確認します。

手順2は申立書・財産目録・相続関係図を作成します。裁判所書式を使用し、財産目録には不動産・預貯金・有価証券などを記載します。相続関係図は戸籍で確認した続柄を整理します。

手順3は被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ提出します。申立先一覧で管轄を確認します。裁判所からの照会や呼出しには必ず応じます。官報公告料は指示があってから納めます。

手順4は選任後の流れを確認します。清算人は相続人捜索の公告、債務支払いなどの清算を行います。清算後に残った財産は国庫に帰属します。特別縁故者への分与は別申立てが必要です。

注意点・よくある失敗

注意点の一覧

  • 戸籍の取り漏れで相続人不存在の疎明が不十分になるため、出生から死亡までの連続を確認します
  • 財産資料が不足すると追加提出や予納金の相談になるため、残高資料と登記事項証明書等をそろえます
  • 申立先を申立人の住所地と間違える失敗があるため、被相続人の最後の住所地で管轄を確認します
  • 旧名称の管理人用書式を使わず、現在の清算人用申立書・財産目録・相続関係図を使用します
  • 裁判所からの照会や呼出しに応じないと審理が進まないため、連絡先を正確に記載します

申立て後に進む流れと本記事の境界

選任後は相続人捜索の公告を経て、清算人が債務を支払い清算します。特別縁故者(生計を同じくした者、療養看護に努めた者など)は、相続人捜索公告期間満了後3か月以内に相続財産分与を申し立てることができます。分与の申立てには収入印紙800円分と郵便切手が必要です。本記事は清算人の選任申立てまでを扱います。分与の詳しい立証や配分は別手続として管轄家裁へ確認します。当サイトの内容は参考情報です。具体的な手続き・条件は、管轄する家庭裁判所の最新案内をご確認ください。

裁判所の相続財産清算人選任の申立書ページ相続財産清算人の選任の申立書ページ

選任の申立てに期限はありますか。

選任申立て自体に3か月のような法定申立期限はありません。ただし特別縁故者への分与は相続人捜索公告期間満了後3か月以内です。財産の散逸を防ぐため、必要性が生じたら早めに準備します。

相続人全員が放棄した場合も申し立てられますか。

申し立てられます。裁判所の概要に相続人全員が放棄して結果として相続する者がいなくなった場合を含むと明記されています。放棄があった事実が分かる戸籍や通知書類も整理します。

予納金は必ず必要ですか。

必ず必要ではありません。財産内容から管理費用に不足が出る可能性がある場合に、円滑な事務のため相当額を求められることがあります。財産資料をそろえて審査を受けます。